『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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男はぎこちなく、時折ゆっくり瞬きして、それでも俺の目を見て、話した。
「お前が気になって仕方なかった。楽しそうに茶淹れてて。見てたかった」
「美味いもん食わしてもらって、——こうして、俺に飯作ってくれて、今は、——もっと見ててぇ」
お前、誰彼構わず引っ張り込んでんじゃねぇの?
半分位、本気でそう思っていた。
なのに、残りの半分を信じたくなる様な真摯な目で。
誕生日にそんな目でそんな事、期待するなってのは無茶だ。お前それ分かってるか?
「俺はさ、羨ましかったよ、お前が。OLちゃんに茶淹れてもらってさ。何で恐い顔してこっち見てんのかな、って」
「俺の作ったもん食って、美味いと思うなら嬉しい、って思った。もっと食わしてやりてぇ、って」
「誰彼構わず引っ張り込んで、飯作らしてんのかなと思うと、なんか、さ」
男の体が僅かに近付く。
「もう、見てるだけじゃ足りねぇし、飯食うだけじゃ満足しねぇ。誰にでもこんな事してんのかと思うと、我慢ならねぇ。お前だけだ」
男の手が、俺の腕に掛かる。
「触って、良いか?」
「触ってみたら、そんな気持ちは間違いだって分かるかもな?」
出来るだけ、悪辣そうに言う。逃げ道が、必要だろう?
言った途端、男の腕の中に居た。
ぴったりと体を合わせて力を込められる。
「俺は、間違ってねぇぞ」
深く息を吸い、吐く、その様子に背中を押された。退路を断つ。
「俺も、そう思う」
閉じ込められていた腕を抜いて、男の背中に回す。力を込めて、名乗った。
「俺は、サンジってんだ」
「俺は、ゾロだ」
互いの腕の中で、互いの名前を知った。
***
給湯室。おやつ時にお馴染みの、窓を開けろのジェスチャー。
「今日は何時に終わる?」
「あー…八時、だな」
「魚で良いか?」
「任せる」
「先に行って、作って待ってる」
「じゃあ…」
キーホルダーから抜いて、投げられるのは、ゾロの部屋の鍵。
「あ、昨日実家からりんご届いた。使ってくれ」
そうか、そろそろ一年になるか。
「そういや、もうすぐあの部屋、契約更新なんだけど」
鍵をしまいながら聞く。
「台所が広いとこに引越そうかと思って。お前も一緒に、どうだ?」
一緒に暮らそうってのか、俺と。
「鍵、いちいち抜いて投げんのも面倒だし」
そんな風にしか言えねぇのかよ。
「いちいち帰んのも、面倒だしな」
ああ俺もそんな風にしか言えねぇや。
なのに。
「帰られんのも、こたえる」
「…!」
そんなストレートを剛速球でど真ん中に。
会社の給湯室で、何て事大声で叫んでんだよ、馬鹿。
それが嬉しくて涙ぐんじまう俺も、相当馬鹿だな。
もうすぐ、3m離れたあっちとこっちの給湯室でのキャッチボールも、終わりだ。
完
20130628-0630,0719,0730,0731
一ヶ月に渡るおつきあい、ありがとうございました。
まるでゾロ誕の様ですね。ゾロがりんご投げるから秋の話になってしまいまして。折角だから誕生日絡めちゃえ、という安易。
押し倒しシーンを期待されているような気はひしひしとしていたのですが(自分も期待していた)組み込めませんで、申し訳なく…。
端折ってしまった誕生日の夜やら、名前も知らなかった一ヶ月とか通い妻状態の一年とか今後とか、ゾロの過去の女話とか、サンジの過去のもにゃもにゃ…諸々、妄想は膨らむばかりです。いずれ読んでいただけると良いなあと思っております。
裏窓とか窓越しの会話とかにロマンを掻き立てられて冒頭だけ書いてあったものの、どう転がしたものだか見えなくて、えいや、と放り投げた所、沢山の励ましをいただき、どうにか完遂する事が出来ました。ありがとうございました。
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