『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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金髪が投げて寄越したマフィンなる物は美味かった。コンビニでパッケージに『マフィン』と書いてある物を見つけたので買って帰った。食べたが、然程でもなかった。紅茶が無いのがいけなかったのか。否、何も飲まずに齧った最初の一口から、あれは美味かった。買うんじゃなかった。百円と言えども無駄にした様で気分が悪い。あれは本当にマフィンだったんだろうか。あの女、嘘教えたんじゃあるまいな?
しかし貰いっぱなしというのも気が引ける。なにせ美味かった。同じ物だと思って買った物が美味くなかったのは金髪の所為じゃない。何か礼を、と思うが、わざわざ何か買って、という程の事でもないだろう。なにせコンビニで百円だ、高級品でも五百円はしまい。手持ちの何か、と思って戸棚を見ると、愛飲のコーヒー豆のストックが目についた。ああ、これなら投げても差し支えない。給湯室で豆を挽いているのを見たこともある、処遇に困る事も無いだろう。金髪が飲まなくても、オフィスの誰かが飲むだろう。豆を挽く金髪を見るのも悪くない。
なかなか良いアイデアだと思った。
マフィンには紅茶を合わせていた。このコーヒーには、何を合わせるだろうか。
翌日は、コーヒー豆の袋をいつ投げるかのタイミングを計り、金髪の動向を気にする事になった。いつにも増して。
***
昨日マフィンをやった男が、相も変わらずしかめっ面でこっちを睨んでいる。あれー?マフィンやったのにそんな顔ー?ひょっとしてお気に召さなかった?こっちじゃ大絶賛だったんだけど?
腑に落ちない思いで睨み返すと、男は窓を開けろのジェスチャーをした。軽く投球フォームをして見せている。
窓を開けると、男の手から何かが飛んで来た。ぽすんと俺の手の中に落ちたのは、…コーヒー豆?
男は「美味いぞ」と怒鳴り、窓を閉めて立ち去った。
コーヒー豆の袋に貼付けられた紙を開くと
『お礼
ごちそうさま。美味かった。どこで買えるのか、知りたい。』
と、ぶっきら棒な文面に似合わない、流麗な文字が目に入った。
どこで、って、…俺の手作りだ。
買いたいと思ってくれる程気に入ってくれたのか。思わず笑みが零れる。
男の声——意外と甘くて、良く通る——を聞いたのはそれが初めてだ、と気付いたのは、早速いただこうと一杯分の豆を挽いている時だった。また聞けるかな、と思ったのは、粉に湯を注ぎ始めた時。粉が膨らんだのを見て、それを楽しみにしている自分に気付いた。
それからは、無心で湯を注ぐ。ただコーヒーの事だけを考える。
そうだ、余計な事は考えるな。
コーヒーの香りと味は、浮かびかけた余計な事を忘れさせるに充分、好ましいものだった。
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20130628-0709
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