『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「明日、暇か? うち来て飯作ってくれねぇか?」
男の、普段とは違う様子に首を傾げた。
「暇だけど、明日?今日じゃなくて?」
男は首肯く。
「良いけど。何かリクエストは?」
突然じゃないのなら、手間のかかる物も下拵えして来れる。
「何でも良い。あー…ケーキも食いてぇな」
「…分かった。作って来るよ」
男は慌ただしく窓を閉めて出て行った。
明日の約束なんて、初めてだ。
ケーキのリクエストも、初めて。
酒飲んだ後、食うのかな、ケーキ。それとも、次の日に?——俺じゃない、誰かと?たとえば、給湯室のOLちゃん。或いは、味醂持って来る女の子。あのコーヒーを、二人分淹れて。
——余計な事は考えるな。
そうだ、ブラウニーにしよう。洋酒をたっぷり利かせたら、酒でもコーヒーでもいけるだろ。
ブラウニーは多めに焼いた。二人前はリクエスト分として確保しておく。残りをおやつに出そうと茶を淹れていると、男があちらの給湯室で窓を開けた。窓を開けて訊く。
「今日は、七時?八時?」
「七時で平気か?」
「ああ。終わらせる」
約束は、大抵七時か八時。それから買い物をして男の家へ行く。男が風呂に入っている間に、料理。そこから二人でだらだら飲み食い。他愛もない事を喋ったり、喋らなかったり。喋らなくても、苦痛じゃない。自宅の様に寛いで、二時間とか三時間。遅くとも終電で帰る。平日、一週間に、二、三回。そんなサイクルが、そろそろ一ヶ月になる。
「今日はさ、殆ど作って来たから、あっためるくらいで直ぐ食えるぜ?」
「買い物もしてかなくて良いし」
「ケーキはさあ、ブラウニーにしたんだ。コーヒーにも合うと思うぜ?」
男は俺の話しかけるのに殆ど「ああ」とだけ返した。表情が固い。何か思い詰める様な。
俺の口も重くなる。
終わり、を告げられる様な。終わりったって、別に何も始まっちゃいないのに。
飯を食い終わると、男はコーヒーケトルに水を入れ、コンロにかけた。
「コーヒーに合うケーキなんだろ?」
そう言って、豆を挽き始めた。
「飲むだろ?」
俺と、ケーキ食うんだ。
俺は皿を片し、卓袱台の上にブラウニーを出した。
「ブラックで良いか?」
男が言いながら、コーヒーを入れたマグカップを両手に戻って来た。
「ああ。良い匂いだな」
「ああ。それも。酒が入ってんのか?」
男はカップを卓袱台に置きながら、ブラウニーを指す。
「ブランデーたっぷりで作った」
「そりゃ楽しみだ」
男の顔が綻んだのを今日見るのは、これが初めてだ。
コーヒーの香りを肺に入れ、ブラウニーにフォークを入れる。
気になっていた事を、訊く。
「今日、何かあるのか?」
男はマグカップを口から離し、俺を見る。
「いつも当日いきなりだったのに、昨日に限って『明日』なんて」
男は一旦、ぎこちなく瞼を落としてから、俺を見て言った。
「誕生日なんだ」
「え?」
「今日、俺の、誕生日」
何だって?
「お、お前、そういう事は先に言えよ!何か、プレゼントとか…ケーキだって、もっと誕生日っぽいデコレーションとか、ロウソクとか」
勢い込んで言った俺に男は苦笑して、俺はばつの悪い思いをした。
「…ってのも、変か」
「まあな」
おたんじょうびおめでとうってチョコプレートでも、ハッピーバースデートゥーユーに合わせてロウソク吹き消すんでも無いよな、いい歳した男が、男と二人で。
「…おめでとう」
「ありがとう」
男はブラウニーを口に入れて、目を細めた。
誕生日を、特別にケーキを食べようと思う様な日を、俺と、過ごそうと思うのか、お前は。
「プレゼントって程大袈裟なもんじゃなくても、何か欲しいものとか無ぇの?」
「一つ、頼みがある。ったって、飯作ってもらってケーキまで焼いて来てもらって何だが」
「良いぜ、何?」
「話を聞いて欲しい」
——話?
→15
20130712,0717,0726-0731
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