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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル

『給湯室』(初回:6月25日)1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 続き

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 *****
      



 給湯室で茶を淹れていると、男もあちらの給湯室に来た。窓を開け、こちらを見ている。こちらも窓を開けると、声が聞こえた。
「昨日はごちそうさん」
「こちらこそ」
「終電、間に合ったか?」
「ああ。やっぱ横断歩道…いや、何でもない」
 手前で曲がった方が早いと思うけど、と言おうとして、言っても仕方ない事だと思い直す。

「今日ももし暇だったら」
「飯、作るの?俺が?」
「迷惑じゃなきゃ」
「暇だし、迷惑じゃない」
「じゃあ、迎えに来いよ」
「その言い方、なーんか偉そう」
「悪かったな」
「お前は迎えに来れないもんなあ?」
「うるせぇよ」

 確かに、また、って言ったけど。昨日の今日で、また、誘われるとは。それを嬉しく思うとか。
 男がどういうつもりなのかは分からない。考えても仕方ない事だと思い直す。

「また八時で良いか?」
「おう。下で待ってる」

***

 連日の終電は酷だろう。「泊まってけ」と言い兼ねない自分も想像出来る。それはあまり良くない事の様な気がした。
 それでも、誘うのは止めなかった。金髪が給湯室に行くタイミングで席を立てなければ、誘えない。声を掛ける事が出来れば、いつも。いつも、当日突然誘った。断られる事は無かった。

「お前、いつも暇だな。彼女とか、居ねぇのか」
「うっせー。お前だって暇じゃねぇか、俺誘って、飯作らせて、俺と飲んで。味醂持って来る女の子は居ねぇのかよ」
「はん、お互い様だ」

 一緒に買い物をして帰る。
 三度目の時。金髪がバラのタマネギをかごに入れようとした。過去二回も、タマネギは買っている。一玉39円。少々小振りだが四玉入った袋は98円だ。それを手に取り、訊く。
「こっちじゃ駄目なのか」
「そんなに使わねぇもん」
「そんな直ぐ腐るもんじゃねぇだろ?」
「まあ、な」
「じゃあこっちにしろよ、割安だろ」
「お前料理しないんだろ?」
「タマネギなんて、何に入れても良いだろ?また作れよ、じゃがいもとベーコンか?あれ。他にも使うだろ?ああ、みそ汁も良いよな」
 もう来ないつもりか?とは、訊けなかった。また来て作ってくれるだろ?とも、言えなかった。
 代わりに、じゃがいもの袋も併せてかごに入れた。

 次第にその日使い切らない食材が増えた。バター、粉チーズ、味噌、パン粉、パスタ、オリーブ油、アンチョビペースト、乾燥わかめ。金髪がまた来て使わなければ、無駄になるだけの物が、増える。
 それは決して、不快ではなかった。
 白ワインを買った。灰皿も買った。それを見つけた時の金髪の顔。
 それは決して、不快ではなかった。
13 


20130628-0630,0719,0724,0726,0727
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