給湯室続編・恋人 6 2013/11/29__00:00

＊6月25日から8月2日まで連載していた現代パラレル『給湯室』の続編　→1
　11月13日付『誕生日の夜』翌日以降と、サンジの過去

　『恋人』1　2　3　4　5

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　歓迎できまいがどうだろうが、過去に手出しは出来ない。

　今日は準備してねぇから、口で。
　だったら、準備、してた、ら？
　サンジは、それを望んでいるのか。

『準備』とやらが何なのか、分からないでは話にならない。
　検索窓に打ち込む。タイプする指が重い。
　……『男同士　セックス　準備』

　膨大な量の情報が、そこには蠢いていた。
　俺の知らなかった世界が、そこにあった。
　サンジにとってはきっと、知っている世界。——恐らく、エースと。

　俺は、望むか？
　準備の必要な、交わりを？

　朝まで二人で包まっていた布団に頭を突っ込んで残り香を探す。
　俺は、どうしたい？

　サンジと、そこへ？

＊＊＊

　それからゾロは、給湯室に来なくなった。

　会社には、来てる。働く姿は見える。時々目が合う、気がする。時々しか見ないようにしてるのに。あんまり見てんのもなんだし。OLちゃん達に気付かれて、これ以上変な噂になってもな。困るのはゾロだ。エースに気付かれるのも、嫌だ。エースを見てるんだとゾロに思われるのは、もっと嫌だ。嫌だと言うか困る。
　目が合ったと思ったら、す、と逸れる視線に、何か言いた気な意思を感じる。
　電話番号も知らないのだ。通信手段は給湯室の窓越しの会話だけ。
　会社の前で、待ち伏せる？　いっそ部屋に行く？
　…避けているのは、ゾロだ。ゾロが、俺との接触を拒んでいる。だから、俺からは会いに行けない。


　ゾロはきっと、女の子と交際する事に一切の疑問を持った事が無い。男と交際するなんて微塵も考えた事が無い。世の大多数の男と同様に。
　俺が、初めてだ。それはちょっと嬉しいけど、ちょっと、困った事だ。
　やっぱり、気持ち悪かったのかな。男のくせに、男に欲情するなんて。男に欲情する俺も、男に欲情した自分も。
　男の俺を好きになっておいて。そんなの身勝手だろ。

　そんな身勝手な事を思って、あれ？と思った。

　そういや、好きだとは言われてねぇかな。

　ひょっとして、俺がちょっと先走っちまっただけなのかな。
　ゾロにそんなつもりは、なかったのかな、体がちょっと反応しちまっただけで。
　あれ？　俺が浮かれちまっただけ？　後悔、してる？

　だとしたら尚更、俺からは会いに行けない。
　

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