『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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八時ちょっと前、会社を出る。普段の帰り道とは逆を行く。二つ隣のビルを左に折れて、一方通行の道路を渡る。マフィンやらりんごやらが上空を飛んだ道だ。
ウチの会社より厚みのあるビルの横を通り、左に折れる。二つ目のビルの入口に、その男は立っていた。
「10分とかからねぇじゃねぇか」
「一時間はかかった」
「どう歩いたら…?」
「道が複雑だ」
「二回しか曲がってねぇよ?」
「そんなの知るか」
「お前ほんとに方向音痴なの?」
「うるせぇ」
こんなに近くで見るのは初めてだ。背の高さは同じくらい。
会話らしい会話を交わしたのは昨日が初めてだというのに、十年来の旧知のように言葉がポンポンと出る。
「会社から家までは、迷子にならねぇだろうな?」
「迷子じゃねぇ」
その言葉通り、駅には最短距離で辿り着いた。まっすぐ歩いて、階段を下りただけ。
「俺もこの駅使ってるぜ?出口は違うけどな」
「地下鉄は違うとこから出ると訳が分からねぇから苦手なんだが、出口さえ間違わなきゃ間違いが無い」
何言ってんだかちっとも分からないが、こいつが昨日来なかったのは故意ではなく、迷子になっていたからだという事は良く分かった。
促されるまま、家に帰るのとは反対方向の電車に乗った。
「何食いたい?」
「酒に合う飯」
「そりゃ聞いた。鍋釜はあるのかよ?」
「あー、なんかあるぞ」
「なんかって、何だ」
「鍋…フライパン…包丁、まな板…汁物掬うのとか、ひっくり返すのとか、菜箸?ザルなんかもあるな」
「料理すんの?」
「しねぇ」
「何であるの」
「実家出る時、持たされた」
黒い窓ガラスに並んで映りながら、ヒアリング。何を買い足せば料理出来るんだ?
「食材は?」
「酒と乾きもんくらいしかねぇなあ」
「そりゃ食材とは言わねぇよ」
「米と卵はあるな、ショウガとワサビもある。チューブのやつ。醤油もあるぞ」
「それ、冷奴と刺身用だろ。朝飯は卵かけご飯か」
「良く分かったな。塩と胡椒と、砂糖もある。味醂もあったか?あと胡麻油」
味醂?料理もしないのに?
疑問に思ったまま訊いた。
「買って来て置いてくんだ、切れたからって突っ返すのも変だろ」
誰が買って来る?何が切れる?って——女か。
「次のが見つけるとうるせぇから、来そうになると棄てるんだけどよ」
「突っ返さなかった味醂が、増える予定も無いからそのまま居座ってるって?」
「そうそう」
「それ、賞味期限大丈夫か?」
「…さあ?」
最後に使ったのはいつだよ、と訊くのもなんだか気が引けた。日本酒と砂糖があれば何とかなるし、無ければ無いでどうとでもなる。
窓ガラスが白くなり、自分達の姿が見えなくなった。男に続いて電車を降りた。
→8
20130628-0713
*冒頭「七時」だったのを「八時」に変更しました。特に本筋には関係ありません。(0727)
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