『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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夜の甲板で波の音と月明かりを肴に飲むのは、悪くない。頬を撫でていく潮風、静寂、胃の腑に落ちるアルコール。賑やかな昼間が嫌いなわけではないけれど、たまには、一人、を感じるのも必要に思う。丸まりたがる刃を、研ぐ時間。
煙草の匂いを夜に混じらせて、酷く静かな気配で奴が甲板にやって来た。片手に小振りな酒瓶を携えている。一日の仕事を終えての一服だろうか。話をするには少し遠い距離だ。俺が居るのは勿論見えているだろう、こちらへの意識を悟られまいとしているのが分かる。ならば別の場所へ行けば良いのに、そうしないのに理由はあるのだろうか。
海の遠くを眺めて、紫煙を吐き、時々酒瓶を傾ける。瓶に口をつける時だけ外す煙草を、挟む指の動きが艶かしい。口から瓶を離す際、唇を舐める舌。俺に見せているのか、見られていると知っているのか、いかにも勿体つけているような仕草。何も考えていないのかも知れないが、そもそも奴の考えは端から分からない。
突っかかりたくなるのは、興味のある証左だ。
良くない傾向だと思う。奴が突っかかってくるのが、俺と同じ理由だとは限らない。同じなら良いのか。どちらにしろ悪いのではないか。
どうするのが良いか分からなくなっているのはもうだいぶ前からのことで、もう考えるのはやめた。それでも思ってしまうのはどうしようもなく、こうして、悶々とする羽目になる。体温が上がって、じとりと背に汗が滲む。
目が合った。瞬きまで見つめ合い、瞬きの後はその流れで視線が外された。奴が俯くと、長い前髪がさらりと落ちる。隠れている顔の半分、月光の下なら見ることも叶うだろうか。
叶う? 見たいのか?
もやもやとした疑問は、残りの酒に溶かして飲み干す。飲み干してしまえばここに居る理由も乏しく、しかし今動くのはいかにも迂闊だ。良くない事になる、予感。
予感ばかりが膨らみ、目を閉じる。眼裏で月明かりを弾いた髪がぼんやりと光る。薄闇に浮かぶ白い肌。良くない。このまま見ないでいれば、予感に支配されてしまう。視線の先にある筈の、奴の本当を見ねば。
目を開く。
奴は、こちらを見ていた。笑っていた。片目を撓ませ、片頬を上げ、片唇を歪ませ、ひっそりと。
これは勝てない。良いも悪いも是非もなく、ふらりと体が動く。奴はそのまま待っている。
空の酒瓶を軽くぶつけた。ころんと軽い音がした。転げ落ちる音だ。何に? そんなもの、自明だ。事態に見合わぬ軽やかな音は、いっそ滑稽だった。
研ぐ時間は奪われて、けれど、何か、は更に研がれていく。
20180705,0722,0723,0724,20191030
*悪いものではないと分かるのは、もうちょっと先。
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