忍者ブログ
『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おめでとうロロノアゾロ!

拍手




 *****
      



 サニーの甲板には、芝が敷かれている。昼日中、そのど真ん中で大の字に寝転んで微睡むのは、なかなかの開放感だ。遠くでクルーが楽しげに騒いでいる声も、良いアクセントになる。
 俺が密かにそれを楽しんでいると、コックが通りかかり「お、光合成か」などと揶揄してくる。「干からびんなよ」などと言いながら、煙草の煙を棚引かせて持ち場に戻って行く。普段ならば。

 ささやかな風が、頰と芝を撫でている。閉じた瞼でも感じていた陽光が遮られた。嗅ぎ慣れた煙草の匂いが立ち止まっている。誰がそこに居るのか、分かっているのに確かめてやるのも馬鹿馬鹿しい。深く呼吸して眠りを待った。と、気配がしゃがむ。匂いは一段と濃ゆくなる。ふう、と一際強く煙が吐き出され、火は躪られた。
 尻が芝に付き、足が投げ出され、背も芝に付く。最後に、投げ出された腕がゆっくりと着地する気配。
「あー…」
 深く、感じ入って出た声が、小さく放られる。唐突に、どんな顔をしているのか見たくなった。
 目を開けて顔を向ければ、後頭から側頭が芝を擦って音と匂いを立てた。
 果たして、コックは大の字で目を閉じていた。穏やかな顔をしていた。
「背中はあったけェし、お日さんもあったけェけど、風が丁度良く熱を払ってくれるな」
 こりゃ良いや、などと言いながら、ゆっくり目を開けて、顔をこちらに向けた。やはり音と匂いが立つ。長い前髪が、さらりと落ちた。久しく見ていなかった右目が覗く。左右でほんの少し色味の違う瞳が、いっぺんに俺を射る。
「誕生日だってな」
 あくまでも穏やかだ。
「そうだな」
 同じ穏やかさで応える。
「何かリクエストは?」
「そうだな」
 食い物なら、何を言っても問題ないだろう。間違いなく美味いものが供される。何も言わなくとも。だったら。
「しばらく、このまま」
 僅かに瞠られ、色の違いがはっきりとした。
「そんなんで良いのか?」
 すぐさま挑発的に細められる。瞳を照らす陽光の量が絞られ、代わりに、少し潤んだようだった。
「夜、もっと近くで見せろ、ってのは、どうだ」
 とうとう目を閉じて、また天を仰ぎやがった。
「お望みとあらば」
 満足気な表情をしているからよくよく見るのは、夜まで我慢してやろう。月明かりでも、色は違って見えるのか。
 夜気に冷えた芝もきっとすぐに温まるだろう。
 投げ出された手の先端、小指に小指を重ねた。



20201111
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[1098] [1097] [1096] [1095] [1093] [1094] [1092] [1090] [1091] [1089] [1087]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
ブログ内検索
最新記事
最新コメント
[04/16 koma@ツツジの花]
[02/23 タカス]
[04/18 koma]
[12/22 koma]
[12/12 ゆう]
プロフィール
HN:
utae
性別:
女性
手書きブログ
忍者カウンター
忍者アナライズ
バーコード
P R
忍者ブログ / [PR]
/ テンプレート提供 Z.Zone