『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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数日後の夕刻、ゾロは店を訪れた。
「サンジは空いてるか」
「申し訳ございません、当店にはそのような名前の者は居りませんが」
慇懃なフロントがゾロをちらりと見遣る。
「…居るだろ? 金髪で、色白の、タチ」
「…ヒカルでございましょうか」
「ヒカル?」
訝しげなゾロの声に、フロントはリストの写真を見せる。
ヒカルとラベリングされたその顔は、確かにサンジだ。
「サンジだろ?」
「お客様、その名、どちらでお知りに?」
フロントは眉を顰め、小声で伝えた。
「当店ではヒカル、と申します。どうか口外なさいません様に」
店での名とは違う名を教えた。フロントの様子から、それは恐らく本名だ。
ゾロの心が、温かく満たされる。
「ああ、悪かった。ヒカル、を」
「生憎、本日ヒカルは埋まっております。タチのリストはこちらでございます、ネコで宜しければ金髪は他にも」
もう、埋まって。
——今も、誰かを。
「いや、いい」
ゾロは足早に店を後にした。一刻も早く、遠くへ行きたかった。
分かっていた事だった。それを生業にしている男。だからこそ、俺を抱いた男。
あれを抱かれたと表現して良いものかは迷う所だが、抱いたとはとても言えない。己の人生に於いて抱かれる事があるなど想像もしなかったが、その抵抗感を覆すだけ、繋がりたかった。抱かれるのでも構わないと思う程に。
『入れるのだけがセックスじゃない』と、覆した思いを見抜かれて示された思いやりめいたものに、自分の直感は間違っていなかった、と。浮かれて。
まるで恋人みたいな一時に、浮かれて。
それが。
恋人みたいに、とオーダーしたからこそ、恋人みたいに、触れ合ったのだと。
源氏名を名乗らなかったのは、それの一環。
そう思えば一層、心が冷えた。
キャバクラに熱心に通い詰める同僚に、何が楽しいのかと訊いた事がある。手玉に取られて、金品巻き上げられてるだけだろう、と。
「馬鹿だな、俺はファンタジーを買ってるんだよ」
「騙されてるって事じゃねぇか、結局」
「それでも、夢を見たいんだよ」
馬鹿はお前だ。なんだと、お前は情緒を解さねぇな。何だよ情緒って関係無いだろ。
あの時の軽口が、ブーメランとなって突き刺さる。
もう忘れてしまえ。
一度だけなら、無かった事に出来る。気の迷いの所為にしても良い。
そう思うのに。
ゾロの足は店に向かうのを止めなかった。
「…ヒカルを」
「生憎ヒカルは…」
そんなやりとりも数度に渡り、フロントはゾロの顔を覚えた。
「前回は、偶々キャンセルの連絡があった直後だったのではないでしょうか。ヒカルは大抵予約で埋まってしまいます。ご予約なさっては?」
偶々見かけた金髪から、目が離せなかった。追いかけてみれば妖しげな店に入ってしまった。数瞬の逡巡の後、飛び込んでみれば売春宿だ、しかも売るのも買うのも男だけときた。件の金髪が“商品”だと分かり、唖然として店を飛び出た。
幾日か店の前を行ったり来たりした。再び目に飛び込んだ金髪を諦める踏ん切りが欲しくて買う事にした。
幻滅するだろう、と。
男に身を売る男なんて、と軽蔑出来れば、己の馬鹿さ加減を嗤って終わりに出来るだろう、と。
とんでもない。
今も誰かを、自分以外を抱いているのだと思えば鉛を飲んだ様な心持ちになると分かって猶、希求している。
全て偶々だ。サンジを見かけたのも、ヒカルが空いていたのも。
「いや、いい」
会えないなら、それまでだ。忘れるか、執着が増すか、どちらに転ぶにせよ。
そしてゾロは今日も店に足を運ぶ。サンジに会う為に、偶々ヒカルが空くタイミングを求めて。
20131013,1014,1030,1101,1105
*何故源氏名がヒカルなのか。オーナーが「キミ、髪が光ってるから“ヒカル”ね」と命名したんだと思う。安直。オーナーは多分、髪が赤い隻腕の男です。
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