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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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9月8日付『人の気も知らないで』 9月9日付『2』 1月9日付『3』の二人

*現代パラレル
*高校生

『今にして思えば』

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 *****
      



 入学式に向かう途中、男共に絡まれた。
 男の言う事なんぞに傾ける耳は生憎持ち合わせていないので、何に絡んできたのかは知らない。恐らく俺様の美しい容姿に嫉妬したんだろうと推測するが、まあ、どうでも良い。売られた喧嘩は買うだけだ。そして買った喧嘩は漏れ無く勝つ。
 誤算は終盤参戦してきた緑頭で、派手な勝利は注目を浴び、カワイイ先生に捕まってしまった。

 緑頭と共に、ゴツい先生に軽く説教を喰らい、入学式に向かった。
 体育館への道を、どういう訳か複雑怪奇に迷いたがる緑頭を引率しながらちょっと話したところによると、この緑頭はなかなか好戦的な剣士らしい。
 俺のチャーミーな眉を馬鹿にしやがって、蹴り飛ばしてやろうと思ったら避けられた。屈託の無い笑顔でもって逃げるもんだから、俺はすっかり毒気を抜かれてしまった。一緒になって、笑った。人相の悪い険しい顔が、ガキみたいに笑うのは、ギャップがあって、なかなか宜しい。
 俺たちは、名前を知り合うより先に、打ち解けた。

***

 ゾロは、剣道部のホープらしい。
「ゾロ見に行こうぜ」
 ウソップが言った。
「何で」
「あいつ、強いらしいぜ? 先輩差し置いて、次の試合に出るんだって」
 ウソップは俺の質問にはまともに答えず、俺の腕を掴んで武道場に引っ張って行く。こいつは気弱なくせに時々強引だ。

 武道場には、既に何人かギャラリーが居た。その全てが女の子だ。そして彼女達はきらきらした目で一人の剣士を見詰めている。
 紺色の道着に身を包んだ、ゾロ。
 頭に黒い手拭いを巻いて、竹刀を振っている。背筋がぴんと伸びている。剣道の心得が無い俺にも、分かる。ゾロは、強い。振り上げた竹刀から、気のようなものが放たれている。そう見える。
 防具を着けての試合が始まった。ゾロが打ち込む度に、きゃー、という黄色い歓声が飛ぶ。忌々しい。けれど、そんな事はすぐにどうでも良くなった。俺の目はゾロに釘付けだった。防具を外す仕草一つからも、目が離せなかった。面を外して顔が見えた時、頭の手拭いを取って額の汗を拭った時、女の子達はまた、きゃー、と小さく悲鳴を上げたけれど、本当にどうでも良かった。普段の俺なら、心底ゾロを羨ましく思っただろうし、腹立ちもしただろうけれど、そんなものはどうでも良くなってしまった。
 俺が女の子だったなら、一緒になって黄色い悲鳴を上げただろう。でも、そうじゃないから。
 
 女の子に交じって自分を見ている俺とウソップを見つけたゾロは、お、という顔をしてから「よぉ」と言って手を挙げた。
 呆れる程サマになっている。
「ゾロ! お前、かっこいいな!」
 ちょっと素直に、けれどそんな事を思ってしまった自分にどうしたら良いか分からなくて、茶化す様に声を掛けた。
 ゾロは、ぽかんとした顔をして、ぷいと横を向いた。
 頬が少し赤らんだ様に見えたのはきっと、俺の欲目に過ぎない。

 若葉の頃だった。今にして思えば、この時既に、俺はゾロに惹かれていたんだろう。



20120924-,1010,1014,20130102
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