言質 2013/01/16__00:00

（またサンジを酔わせてしまった）

---

「なあ、お前は何時、俺に手ぇ出してくるつもり？」
　こいつは今何を言った？
　焦らしプレイかよ全く変態だな、等とぶつぶつ言っている奴の足元には、空いた酒瓶がごろごろしている。
　なんだ、酔ってんのか。
　安堵と、失望と、諦観の溜息が、漏れる。

　ちょっとくらいなら、夢を見ても良いんじゃないか。
　そう思う程度には、我慢した。
　けれども。
　酔っぱらいを無理矢理どうこうする程落ちぶれちゃいない。
　けれども。
　据え膳食うぐらいなら、良いんじゃなかろうか。
　そう思う程度には、限界だ。

「手ぇ出して欲しいなら、誘えよ」
　一瞬ぽけっとした阿呆面を晒したサンジが、じわじわと相貌を変えていく。あからさまに性的な欲を滲ませる。
　こいつも、こんな顔するのか。女相手にでれでれする顔とは、全く違う。ぞくぞくする様な、色気を帯びた、顔。
　その顔を、ゆっくりと俺の眼前まで近付けて、触れないけれど体温が感じられるぎりぎりの所でぴたりと止め、サンジはにやりと口の端を歪めた。数ミリ突き出せば、唇の触れる距離。近過ぎて、焦点が合わない。けれど退く事も目を逸らす事も出来ないで、くらくらする。

「誘って欲しけりゃ、誠意を見せろ」
　突然額に衝撃が走り、思わず仰け反った。
　倒れ込んできたサンジの指が、俺にデコピンをかました事を物語っている。
「なにすんだっ」
　思わず叫んだが、それをサンジは聞いていなかった。俺に伸し掛る様にして、既に入眠している。
　やはり、酔ってたか。

　酔っ払いに伸し掛られたのを抱き抱える、それが役得だなんて、デコピンの代償にしたってささやかだ。
「誠意を見せたら、誘ってくれんのかよ」
　サンジが聞かない以上独り言に過ぎないが、言質を取った気分で役得を堪能した。

---

20121128,1206,20130111

焦らしプレイかよ全く変態だな　って言わせたかったんです。
誠意って何だよこの酔っ払いめ。