『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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翌日もゾロは店を訪れ、特盛牛丼を注文した。
「お、来たな」と言って接客した店員は、食べ終えたゾロに「ちょっと待ってろ」と言ってバックヤードに消えた。
程なくして戻った店員の手には、紙袋が提げられていた。
「これ、やる」
「何だこれ」
「おかしなもんじゃねえよ。器は明日か…また来た時で良いから」
「器?」
眉を顰めたゾロの質問は、他の客が店員を呼ぶ声に遮られた。
家に帰り、ゾロは紙袋の中を検分した。
大判のハンカチに包まれていたのは弁当箱で、蓋を開けると、色とりどりのおかずが詰まっていた。
メモが一枚。
『なるべく早く食え』
ゾロの腹は特盛牛丼で膨れていたが、卵焼きを一つ摘む。
美味かった。
腹の膨れた状態で食べてしまうのは勿体なく感じ、それは翌朝、ゾロの朝食になった。
その日の夜もゾロは店を訪れ、特盛牛丼を注文し、同時に店員に、紙袋を差し出した。
「ごちそうさま。美味かった」
端的に感想を述べたゾロに、店員は、笑った。
ゾロが見たかった、笑顔だ。
ひと月程前、通りかかった牛丼屋の中、きらきらと光るものを見た。客に話し掛けられて、それに返す店員の笑顔が、少し曇った硝子越しに見えた。きらきら光って見えた店員の、笑顔。
もう少し近くで見たいと思って、通った。毎日通っても、ゾロから話し掛ける事は出来なかった。大体何を話せば良いか分からない。よくよく観察してみると、その店員は大概、殊、男の客に対しては無愛想だったし、ゾロが店を訪れる時間帯の客は大抵が男だった。
ゾロが毎日牛丼を食べてまで見たいと思った笑顔は、客が「ごちそうさま」と声を掛けた時にだけ、見る事が出来た。
通い詰めた甲斐があったというものだ。
話し掛けられ、弁当を渡され、笑顔を向けられた。
その笑顔が、にやにやとしたものに変わり、店員は言った。
「お代は…」
「金取んのかよ」
ゾロは温まった心が少し冷えた気がした。しかし、そんなもんだろう、と思い直し、財布を出す。そういえば貧乏人だと言っていた。
「ワンコインしか出せねえぞ?」
店員は、それを制して言った。
「アンタの連絡先で勘弁してやるよ」
ゾロは財布を片手に、動きを止めた。
「俺の連絡先に、それだけの価値があるのか?」
「それを決めるのは、俺だ」
「それに、アンタ次第だろ」
そう言って店員が浮かべた笑顔は、ゾロの焦がれた、幸せそのものといった笑顔とは違う、悪辣といっても良さそうなものだったけれど、ゾロはそれもまた気に入った。
携帯の番号を紙ナプキンに書いて渡すと、一瞬、焦がれたあの笑顔を見せたから、必ず安かったと思わせてやる、とゾロは思った。
20130407,0413,0414,0419,0420
*何で店員がゾロに惹かれたのかは分かりませんが。頬袋だろうか。あ、店員はサンジですよ(わざわざ言わんでも)。
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