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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル

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 日付が変わる頃の牛丼屋の店内は、閑散としている。雨と風の強い今日は尚の事、客も店員も一人ずつしか居ない。

「牛丼好きなの?」
 客であるゾロが、カウンターテーブルに丼を置いた手を辿って声の主に視線を遣ると、青い目と搗ち合った。
「いっつも特盛牛丼オンリーだろ?たまには野菜も食えよ」
「金が無ぇ」
 ゾロが正直に答えると、青い目の店員はみそ汁を置きながら言った。
「だからって毎日牛丼だけじゃ、栄養が偏る。どうせ昼間も似た様なモン食ってんだろ?」
「牛丼屋が言うな」
 ゾロは箸を取る。
 本当は、動揺している。まさか話し掛けられるとは思っていなかった。しかもこんなフランクに。

「そうだけど。良い体してんのに、勿体無ぇよ」
 そう言って、店員は小鉢に入れたサラダをゾロの目の前に置いた。
「今誰も居ねえからな、サービス。内緒だぜ?」
 金髪を揺らして、悪戯そうに笑う。
「…助かる。いただきます」
 ぱん、と手を合わせてから、むしゃむしゃと頬張る。
 店員はカウンターの中でその様子を見ていた。

 他の客は来ない。
 ゾロは牛丼を掻き込みながら、店員に話し掛けた。
「お前も毎日居るな」
「働かなきゃ食ってけねえもん。この時間は金も良いし、賄いもついてるし」
 みそ汁を啜っていたゾロは笑った。
「お前も毎日牛丼なんじゃねえか」
「まあな。でもサラダは食ってるぜ?丼一杯」
「そんなんで栄養の偏りは免れんのか?」
「無理だろうなあ。まあ、貧乏人はしょうがねえよ」
 特段やる事の無いらしい店員は、カウンターに凭れて気怠気に答えた。

 器が全て空になっても、他の客は来ない。
 ゾロは立ち上がり、セルフサービスの茶を汲んで元の席に戻った。
「昼間は何やってんだ」
「調理師学校の学生さん」
「コックになるのか」
「まあな」
 店員は、器を片付ける気は無いらしい。カウンターに凭れたまま会話を続けている。

「で、アンタは毎日食いたい程牛丼が好きなの?」
「別に。腹が膨れりゃ何でもいいんだ、あとは財布の都合だ」
「毎日同じ味で、飽きねえ?」
「飽きる。正直、飽きてきた。お前、コックになるなら、味に一工夫、とか出来ねえか?」
「俺が味付けたら、ここの牛丼じゃなくなっちまうだろ」
 店員は、にやりと笑った。
「大体、俺の料理がワンコインで食えると思うなよ?」
「大した自信だな」

 茶も二杯飲めば充分だ。ゾロはべたつくカウンターテーブルに湯呑みを置いた。
 やっと器を片付けだした店員が言った。
「なあ、アンタ、明日も、来る?」
 ゾロは席を立ちながら答える。
「…そのつもりだが?」
「そ」
「何だよ」
 ゾロが問い質そうとした時、他の客が入って来た。
「いらっしゃいませー」
 もうこちらに注意を払わない店員を忌々しく思いながら、ゾロは小さく「ごちそうさま」と言って店を出た。



20130407,0413,0414,0419,0420
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