『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「知ってるよな?」
「何を?」
「知ってるだろ」
「だから、何を」
ゾロの指が、俺の襟元を掴んだ。
「俺が、お前を、どう思ってるか」
そんな事。
「…気に入らねぇんだろ?」
ゾロの豪腕が、俺を引き寄せる。
「本気で、そう思うか」
いつもの様に、眉間に皺を寄せて。奥歯をぎりりと噛み締めて。
至近距離で臨むその顔は、いつも以上に凶悪だ。
「人の事、殺しそうな顔で見ておいて、それ以外にねぇだろ?」
負けない様に、精一杯威嚇の表情で睨む。
負けたくない。俺はゾロに、負けたくない。
ゾロは、唐突に手を離した。
「知らねぇんだな、何にも」
溜息だけ残して、ゾロは出て行った。
何だよ、それ。
気に入らねぇ以外の感情なんて、知らねぇよ。お前の、俺に対する感情なんて。
…違うみてぇな事、言うんじゃねぇよ。
…期待、しちまうだろ。
***
気に入らないのだと、思っていた。
ざわざわと、胸に引っかかるのは。
金色の髪が揺れるのが、白い煙が揺れるのが、目について、瞼を閉じても眼裏に浮かぶのに、気分が落ち着かないのは、全部、気に入らないからだと。
自分にかけられる言葉に、他の連中にかける言葉に、その違いに、胸を掻き乱されるのは、全部、気に入らないからだと。
そう思っていた。あの日、あんな夢を見るまでは。
俺は発した事の無い彼奴の名を呼んだ。俺の名を呼びながら振り向いた彼奴は、笑顔だった。
俺に向けられた事の無い、笑顔だった。
それを見た時、俺は嬉しく思っていた。
そして目が覚めた。
あんな笑顔を向けられた事は無い、と思った瞬間、胸が痛んだ。
どうしようもないと思った。そして、理解した。
気に入らないのではなかった。それどころか、気に入っていたのだ、と。気に入らなかったのは、彼奴の、俺に対する処遇だった、と。
自覚してしまえば、それはもうどうしようもない。
どうしようもないが、それまでの習慣もまた、どうしようもない。
気に入らない、ではない感情を、どう示せば良いのかなど、分からなかった。
胸ぐらを掴んで引き寄せる行為は同じなのに、そうする理由がまるで違うと自覚すれば、躊躇が生まれる。
自分の感情の変化に未だ慣れない俺は、その躊躇を巧く隠せない。
彼奴の目の前に晒したその躊躇に、彼奴の眼が揺れたのを見た。
知られた、と思った。
だから、訊いた。
けれど、「気に入らねぇんだろ」と。
どうしようもない。
気に入らない。
何もかもが、気に入らない。
彼奴の、俺に対する処遇も、彼奴が、俺が彼奴を気に入らないと思っていると思っている事も、彼奴に、そう思わせてしまう俺も。
何もかもが、気に入らない。
どうしようもなく、気に入らない。
20120804,1009
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