『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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<承前>
会議が終わり出席者の捌けたフロアは、今は静まり返っている。後片付けをする派遣社員に「後はやっておくから」と恩を売るついでに会議の成果を一人噛み締めるのを、またはぽっかりと浮いた空白の時間を、俺は好んでいる。最近この機会に心を占めるのは、専らあの男の視線だ。全く胸糞悪い。正直に言うならこの機会だけでもない。全く胸糞悪い。しかし、悪いだけでもない、と思い始めている。特に時折返される、笑顔。毒気を抜かれる。あの男に、俺の視線はどう映っているのだろうか。せめて物欲しさは浮かんでいないと良いのだが。
いい加減戻らねばなるまい、とエレベーターホールに向かう。と、その奥にある階段に通じる重たい扉が、僅か開いた。隙間から覗くのは金髪と、あの、視線。僅かに笑んだ気配がして、扉はひとりでに閉じていく。思わず走り、完全に閉じる前に、手を掛け押し開く。果たしてそこには一人、咥え煙草で扉のすぐ横、壁に凭れる奴が居た。
突発的な不整脈を感じ、ごまかす様に鹿爪らしい声を出した。
「社内禁煙だ」
「火、つけてねェもん」
ふらふらと咥えた煙草を上下させる口調は軽い。
「お前も飽きないね」
「何がだ」
「随分ご執心じゃねえ?」
睨みつけながら隣に並んで閉じた扉に凭れると、男はこちらに顔を向け悪い顔で笑み言った。
「俺に」
「自惚れ屋だな」
「そうでもねェと、思うけど」
男は顔を正面に戻し、俺は外れた視線を追う様に向かいの壁を見る。最低限の照明にぼんやりと照らされる白い筈の壁は寒々しく、体の左にほんのり感じる体温を酷く希求した。全く、自惚れなんかじゃない。臍を噛む思いで居ると、聞き間違いかと勘違いする様な声が低く、小さく響いた。
「ここ、カメラ無ェぜ?」
思わず隣に顔を向ける。
男の顔も、こちらを見ていた。
誘う様な、視線だった。
「おまけに、滅多に人も通らない。よしんば誰かが階段を使おうとしたって、」
男の尖った靴先がリノリウムの床を叩く。タンタン、と乾いた音が響いた。
「誰かが進入すれば直ぐに分かる。この階の入口はお前の背中だし」
「直ぐに離れれば、見せたくねェもんは解消出来る、と?」
「ご明察」
男の口から煙草を引き抜く。引き摺られて捲れた唇の内側は薄暗い中、それでもはっきりと赤く感じられた。男は微動だにせず、柔い笑顔に異質な光を滲ませた視線で俺を射ている。
じりじりと近付けた唇は、呆気なく触れ、俺に男の熱を感じさせた。
<つづく>
20141105,1106,1107
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