『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「昼間は暑くなったけど、夜はまだ冷えるな」
サンジが日中椅子の背に掛けたままだったジャケットを羽織り、前を掻き合わせて甲板に出て来た。手ぶらだ。酒の追加でもつまみを持って来たのでも無い。
寒いならわざわざ外に出てこなくても良いだろう、中に入ってろ、と思ったままを言う。
「つれねぇ事言うなよ。隣で星見るくらい、良いだろ?」
出来るだけ不機嫌な声で言ったのに、サンジはへらりと笑って、俺の隣に座った。
微かな燐の香りと、煙草の匂いと、流れて来る紫煙。
サンジは本当に星を見ている。
俺は体重を後ろに掛け、体を後方に引いた。猫背で首だけ上げているサンジを斜め後方から見る。
伸ばされた白い喉元に、齧りつきたくなるから、困る。
そう言ってやったなら。泡を食うだろうか。怒るだろうか。——泣く、だろうか。
せめて俺と同じくらいは困れ、と、実行に移した。
サンジは、——笑った。
嘲笑の色なく、ふんわりと。俺はそれを幻か何かを見た気分で見つめた。
「俺も、困ってる」
サンジの眉が、へにゃんと下がった。
「お前がそう思えば良いのに、って思って、困ってる」
そしてから、——泣いた。
ころころと涙の粒がサンジの頬を転がった。俺はそれに指を伸ばした。お互い困っているのなら、許されるだろう、と。
指の腹で頬を擦っても、サンジは怒らなかった。そしてほとほと困った顔をした。
「こんなんで、嬉しいんだもんなあ。ほんと、困る」
もっと、困らせてやる。
言いながら、顔を近付け、唇に唇を落とす。ゆっくりと。
触れた勢いと同じ速さで離れると、サンジは言った。
「喉元齧るんじゃなくて、良いの?」
良いのか、と問うた自分の声が、みっともなく震えて聞こえた。
押し倒したサンジの瞳には、俺と、その背後に星が映る。
「ほんと、困るよなあ」
言いながら閉じられたサンジの目の端から、涙が零れる。そこにも、星が。
二人して困るんなら、それも良いだろ。
困ったと言いながら、お前がそんな幸せそうな顔をするなら。
思いながら口づけると、サンジが言った。
「それでも良いよな」
目を開けて笑んだサンジの瞳には、俺だけが——幸せそうな顔の俺が、映っていた。
20130518
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