『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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30
駅の改札を出た。販売所とは別の方へ歩く。三ヶ月前にチャレンジした時は目に入らなかった交番に入って、訊く。
「パティスリーバラティエという洋菓子店を探しています」
お巡りさんは交番を出て、指を指しながら教えてくれた。
「この道をまっすぐ行くと、100m程先の左手に青い看板が出てますよ」
まっすぐ。100m。左。
「ありがとうございました」
言われた通りの場所に、その店はあった。店の前に立ち、左を見ると駅が見える。あの時辿り着けなかったのが不思議だ。
ガラス戸から中を覗く。ショーケースの中にケーキ。棚には焼き菓子。奥には喫茶スペースもある様だ。ちょっと見ただけではサンジは居ない様だが、厨房にでも居るのだろうか。
足が竦む。けれど、逃げる訳にはいかない。一度深呼吸をして、ガラス戸を開けた。
「いらっしゃいませ」
ショーケースの奥に居る店員に尋ねる。
「サンジさん、居ますか」
目を大きく開いた店員は、後ろを振り返った。一部ガラス張りになったその奥が厨房の様だ。目を凝らすと、白衣に身を包んだ人物が作業している。
サンジだ。
じっと見ていると、サンジが、こちらを見た。サンジの目が極限まで開いていく。
『ゾロ』
口の形が、そう動いた様に見えた。忘れられていなかった。ほんの少しの安堵。
困惑した顔のサンジが、厨房の扉を開け、一直線に俺の前まで来た。
「ゾロ…お前、どうして…」
声が震えている。
「買いに来た。菓子。これで、見繕ってくれ」
いつかの茶封筒を差し出す。
それをじっと見たサンジは、ゆっくりと受け取り、言った。
「辞めたって聞いた。実家に帰った、って」
「ああ。…少し、話がしたい。時間、良いか?」
「後始末して来るから、ケーキでも食べて待ってて」
サンジは店員に何か指示して、厨房に戻った。
店員に案内された喫茶スペースで、チョコレートケーキと紅茶を出された。やはり掻き込む様に食べてしまう。熱い紅茶をゆっくり飲む。丁度全部空になった所で、サンジが来た。
「お待たせ」
サンジは白衣ではなく、普段の格好だった。
「仕事、良いのか?」
「今日はもうやる事ねえし、早退」
空の皿とカップをカウンターまで運び、店員に「後はよろしく」と声を掛けたサンジに促されて外に出る。
「どうする? 外じゃ暑いし、俺ん家で良いか?」
首肯くと、サンジは歩き出した。後を追う。
何から話そう。話したい事はたくさんある。話さなくてはならない事も。それから、話さない方が良いだろう事。けれど、話さなくては終われない事。
「こないだの集金の時さ、ゾロじゃなかったから、二ヶ月連続で。訊いたんだ。辞めたのか、って。実家に帰ったって言われたけど?」
「父親が危篤だって電話があって、急いで帰って。そしたらもう死んでて」
サンジは、悼む表情でこちらを見た。何か言おうとして言葉が出ないのを制して言葉を継ぐ。
「黙って朝飯食いに行かなくなって、悪かった」
「…いや、良いよ、そんなの。事情が事情だし」
「…待たなかったか?」
「…ちょっと待ったけど。そうだよな、お前、楽しみだって言ってくれてたし、事情があったに決まってるよな。なんで俺、そこまで頭が回らなかったんだろ。馬鹿だな、変に勘ぐって…」
ぶつぶつ言うサンジは、眉間に皺を寄せている。来ない俺に腹を立てたか傷付いたかして、今、そんな自分に腹を立てているのだろう。無駄にマイナス感情を持たせてしまった。
「嫌な思いさせて、悪かった。連絡する術が、無かった訳じゃ無いのに。気後れ、しちまって」
そうだ、連絡する術は、有った。どうにでもなった。無かったのは、勇気、だ。
サンジは、忸怩たる思いで歪んでいるだろう俺の顔を見て、意外そうな顔をした。
「いいんだ。大変だったんだろ? 俺が勝手に、考えが足りなくて、勘違いして、拗ねてただけだから」
サンジは、いつも俺の心を浮上させてくれる。
三ヶ月前まで毎日通ったマンションに着く。
「家着く前に、話終わっちゃったな?」
「いや、もっと話したい事があるんだ。良いか?」
「勿論」
三ヶ月振りのサンジの部屋は、三ヶ月前と何も変わっていなかった。すっかり自覚してしまった今となっては、よくも部屋に二人きりで居れたものだと思う。
「パティシエに渡す土産じゃねえけど」
少し回復した母に「散々ご迷惑おかけしたから、皆様に差し上げて」と山と持たされた手土産を一包み手渡した。
「吉備団子だ」
「岡山か」
「俺にとってはお袋の味だ。張り切って作ってた」
冷たい麦茶を出してくれながら、サンジは目を輝かせた。
「お母様の手作り! 早速頂いて良い?」
包みを開けたサンジは、だったら、と言いながら熱い茶を淹れ、団子を頬張った。素人の作る菓子がプロの舌にそんなに美味く感じる訳はないのに、サンジは「美味い。あったかい味がする」と言って良い笑顔を見せた。
まず、話さなくてはならない事。
「もう、完全に実家に帰る事になった」
「うん」
「だから、もう、会う事も無いと思う」
「そうか…」
サンジの顔が、残念そうに見えた。思い上がった誤解だとしても、もう会う事は無いのだから構わない。最後の思い出だ、自分に都合の良い様に解釈すれば良い。
俺は、喋った。三ヶ月の間、何を思ったか。サンジと喋れないのが、どれだけ苦痛だったのか、改めて知る。
突然会えなくなる事が、世の中には有る。いつ死ぬかも分からない。ならば伝えられる時に伝えておかなくてはならない、と。
サンジと会えなかった三ヶ月で、思い知った。
一年分くらい喋った。
いくらでも喋りたかった。
サンジは柔らかく相づちを打ってくれた。その声さえも、得難いものだと知った今は、聞き逃したくなかった。
最後に、話さない方が良いだろう事。けれど、話さないと終われない。
「俺は、お前の事、好きだった、と思う」
「ごめんな。気持ち悪いよな。親切で、飯まで食わせてやったのに、そんな邪な目で見られてたとか、嫌だよな。本当に、ごめん」
「もう、会う事も無いし、言ったってしょうがないんだけど、でも、どうしても言わないままで居るのは辛くて、俺の自己満足に巻き込んで申し訳ない」
「こんな事、俺が言えた義理じゃないけど、簡単に人を家に上げたりすんなよ? お前、隙だらけで、心配だ」
「じゃあ、ごめんな。ありがとう。お前と会えて、俺、俺は嬉しかった。ありがとう。じゃあ」
呆気にとられた顔のサンジに、精一杯の笑顔を向けて、席を立った。
サンジが、俺の手首を掴んで引っ張った。何だ、殴られるか、それも仕方ないか、と思って、サンジを見た。
初めて見る様な、強い意志を持った目で射抜かれた。
「同じ気持ちだって知って、諦められるかよ」
サンジは、何を言っているんだろう。
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