『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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今月も、月末が来た。
「ろろろあ、や、ロロ、ノ、アさん…」
苦笑された。
「ゾロ」
「え?」
「下の名前。ゾロ、です。『ゾロ』でいい、すよ」
新聞屋さんがお釣りを手渡しながら、言った。
俺はお釣りを受け取りながら、言う。
「…じゃあ、ゾロ」
「はい」
「敬語、止めねぇ?」
「堅苦しいのもアレだし。そりゃ、新聞屋さんと客だから、馴れ合う事もねぇのかも知んないけどさ、ほら、折角だし、その、歳も近そうだし、他に誰が見てるでもねぇし、普通に喋ったって罰当たんないだろ?」
早口で捲し立てる。何言ってんだ俺。
「ちょっと仲良くしたいと思ってさ」なんて言わなかったのは、なけなしの良心、ってやつだ。いや、良心なんかじゃなくて…単なる臆病。
馴れ合う必要以上に、仲良くする理由なんて無い。歳が近いから何だってんだ、アホか。
客だから、あからさまに拒絶される事は無いかも知れない。自分の事として考えたって、そうだ。お客様から「仲良くしたい」とか言われたら、それがどんな奴だったとしても「ふざけんな馬鹿」と言って拒絶したりなど出来ない。曖昧な笑顔で首肯く自分が想像出来る。(それがもし美しいレディだったりしたら喜び勇んで連絡先の交換でもするかも知れないがそれはまた別の話だ。)
けれど俺は、この新聞屋さんと「仲良くしたい」と思った。
月に一度か、多くて二度、精々五分程度顔を合わせるだけの存在だ。
けれどそれを楽しみにしている自分に、気付いてしまった。
そのまま取って置いてある、75円のお釣り。新聞屋さんが作ったのかも知れない、それ。
その下に敷いてある、二枚のメモ。新聞屋さんが書いた、字。新聞屋さんが介抱してくれた、証拠。
それをそのままにしてある、理由。
全部「仲良くしたい」に通じるじゃないか。
ごまかすのは、もう止めだ。
「な?」
邪心など欠片も無く見える様に、笑顔を作った。上手く笑えたろうか。
新聞屋さんは、面食らった顔をしてから、僅かに頬を弛ませて、小さく首肯いた。
「俺は、サンジ、だ」
「知ってる」
二人で声を出して笑った。
「仲良くしたい」の意味を考えるのは、一先ず棚上げだ。
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