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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル → 1 2 3 4 5 6

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 <承前>

 次に目が合ったらどうなってしまうのか、自分でも予想がつかなかった。よもやいきなり襲い掛かる程理性が無い筈は無いし、周囲から隠し様の無い程中心を昂らせてしまう程初心じゃない筈だ。しかし赤面くらいはしてしまうかも知れない。
 そう思うと、目を合わせる事が出来なくなった。そうであるのに、出くわす機会は以前より増えた。姿を認めると目で追ってしまうのに、目が合いそうになると慌てて視線を逸らす。あの男からの視線もこちらに留まる気配は無い。『だるまさんがころんだ』でもしている様だ。同僚と何か怒鳴り合う勢いでやり合っている様子、軽口でも叩いているのか屈託なく笑う様子、一人真剣に書類に目を落とす様子。物陰からこっそり見詰めるなんてどこの乙女だ。
 何も出来ずに居る俺を、薄れない記憶が苛む。誘う様な視線、赤く捲れた唇、口元の感触。こんなのは、全く俺らしくない。

 珍しく遅くまで一人、残業をした。終電に間に合う様に切り上げ、帰り支度を済ませてコートを着る前に小用を足しに行く。個室が一つ埋まっていたのに気づかない程度には、膀胱が限界だった。勢いよく放出していると、水洗の音に次いで個室の扉が開く。自分しか残っていないだろうと思っていたからそれに少し驚いて、鏡越しにそちらを見遣る。と、あの男が、俺と同じく意外を表した顔で、鏡越しに俺を見ていた。
 男は直ぐに顔を平生に戻し、鏡越しの視線を外さないまま手洗いスペースに歩を進めた。畜生、こんな時に限って小便が終わらない。男は悠然と手を洗い、ゆっくりとポケットから取り出したハンカチで手を拭いている。充分に乾いた手でハンカチを丁寧にポケットに仕舞い、直接な視線を俺に寄越してから、出口に向かってゆっくり歩む。俺はやっと出し切った尿をおざなりに振り払い、おざなりにモノを下着に押し込んだだけのだらしなさで、出て行こうとする男の腕を掴んだ。男は振り向き様「手ェくらい洗えよ、ばっちいな」と言ったが、俺に腕を引かれるままにした。男が出て来たばかりの個室に押し込み入る。
 男の腕を掴んだ手は、馬鹿みたいに力が入りっぱなしだ。そうせねばならないと何かに急かされる様に、強引に口を唇で塞いだ。隣の個室との仕切りに男の背を押し付け、ぎゅうぎゅうと身体で圧迫する。一分の隙もないスーツ姿と、半分開けた下半身のだらしない姿。端から見れば滑稽でしかないだろうが、これを見る者は誰も居ない。舌まで入れてやっと、身体の強張りが解けた。記憶の中の官能が、現実を取り戻す。拒まれず、更には与えられる。確かな熱、確かな肉、確かな欲。押し付けていた筈の身体はいつの間にか同じだけの力で押し返されている。

 水洗の音も途切れた人気の無いフロアのトイレには、荒くなった二人分の呼吸音と身動ぐ度の衣擦れ、唾液塗れのリップ音だけが微かに響く。
「ここにも、カメラは無ェな?」
 離した唇同士が細長く伸びた唾液で繋がっているのを見ながら言った。
「人も、来ねェだろうなァ」
 男は中空で切れ垂れ下がった唾液の糸を、舌で拭いながら言う。

 俺の手は男の着衣を乱しに掛かった。
 
<つづく> 

20141116,1119
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