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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*気分は女子会

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 サンジはその夜、しこたま飲まされていた。杯を勧めるのはナミだ、断れる筈が無い。
 ナミは一回サンジのグラスに酒を注ぐ間に自らのグラスを三回空にしたが、酔いの方はサンジの方が三倍勝っていた。サンジとて酒に弱い訳ではない、と本人は主張する。ナミさんが素晴らしき蟒蛇なだけだ、と。事実がどうでもナミは構わないが、この船には既に蟒蛇が二匹居るのだから、サンジ君はちょっとお酒に弱いくらいで丁度良い、と思う。何より酔いで頬染めたサンジは、何と言うか、可愛らしい。仮にも年上の男だが、そう思うのだから仕方ない。少なくとも、顔色一つ変えず鯨飲するゾロより余程。
 私も少し酔っているのかも知れない、とナミは思う。ゾロを可愛さの俎上に乗せるなんて、正気の沙汰じゃない。
 大体どうしてゾロとサンジ君を対にして考えてしまうのだろう。同い年だから? 否、年齢なんて関係無い。同じ様に同い年のルフィとウソップをこんなにも対比する事など無いじゃないか。正反対の性質を備えた二人を、どうして。
 ——本当は、ナミにも分かっている。彼らが全く違うのはその半分で、残りの半分はとても似ている。そして、違う場所は違うが故に、ぴったりと、嵌まる。
 互いが唯一無二の存在だと、彼らが思っているかどうかは知らないが、ナミにはそう思えるのだ。だから。ナミには歯痒かった。こうと決めたら梃子でも動かないだろうゾロより、サンジの方が幾分御し易いだろうと踏んだ。自分とタメを張る、あるいはそれ以上の蟒蛇であるゾロより、酔わせるのも容易い。酔えば本音も漏らし易い。

「朴念仁相手だと、辛いわよね…」
 ナミは酔いに任せた演技をした。分かり易いアンニュイ。
「え…」
 ぽやんと頬染めたサンジが、ぎくりと体を固くする。
「ナミさん…ひょっとして…恋、でも…?」
 かかった。と思った事はおくびにも出さず、ナミは溜息を吐いて見せた。
「サンジ君はどうなの?」
「ナミさんは朴念仁なんかじゃないよう」
 どうしてそこで私の名を出すかな。ナミは内心舌打ちしたが、勿論それもおくびには出さない。
 染まった頬でにこにこしながらついついグラスを空けてしまうサンジに何度目かの酌をしながら、ナミは聖母になったつもりで言った。
「私にまで虚勢を張る必要は無いわ。素直に打ち明けてご覧なさい」
 勿論本心は面白がっているのだが。しかし面白がっているだけでもない。二人の幸せを祈っている。本気で。いや本当に。
 サンジの眉はへにょんと下がった。そんな所も可愛らしい。卑怯な程だ。こういう可愛い生き物には早急に然るべき庇護者をつけてやらなきゃ駄目だ、全部もっていかれてしまう。
 女としての本能が危機を告げている。ナミはほんのちょっとの利己心でもって、核心に迫った。
「男同士だなんて、悩む必要は無いと思うの」
 サンジの眉はますます下がる。
「でもナミさん、あいつは、俺の事なんて、嫌い、だろ…?」
 かかった。サンジを嫌っている様に見えるクルーはこの船に『あいつ』唯一人。しかしサンジの口から言わせなければサンジはきっと否定する。ナミは慈愛の籠もった笑顔で言った。
「バカね、サンジ君。そんな訳無いじゃない」
「だってあいつ、俺の名前…呼んだ事、無いんだぜ…」
 自分で発した言葉に傷付いたとみえて、サンジの瞳はせつなく揺れている。
 ほんとにバカね。ナミまでせつない気持ちになる。なんとかしてやらなくては。
「いい?サンジ君。お酒よ。飲むの。飲ませるの。酔って酔わせて、訳分かんなくしちゃいなさい」
 サンジは真剣な顔でナミの言葉を理解しようとしている。
「大丈夫よ。あいつはサンジ君の事、好きだから」
 サンジは不安そうに言った。
「ナミさん、本当に、そう思う?」
「思うわ。サンジ君が素直になれば、大丈夫」
 力強く言い切ったナミに、サンジはふわりと笑った。
「ありがと、ナミさん。俺、やってみる!」

 多分ナミも酔っていた。
 あれだけせつなげだったサンジが、意外と思い切りよく実行に移し、蟒蛇であるゾロが意外にも酔い、まんまと既成事実を作ってしまう事までは、予想出来なかった。
 もうちょっと時間掛かると思ってたんだけど。その間ぐじぐじ悩むサンジ君で遊ぶのはさぞかし楽しかったろうに。いやいや、上手くいって良かったわ。いや本当に。

 ナミの睨んだ通り、否それ以上に、なるようになった二人を目の当たりにして、ナミが嬉しいやら馬鹿馬鹿しいやら複雑な気分になるまで、あと少し。
 発破をかけた自分はあの時相当酔っていたのだと、バカップルにあてられて辟易としたナミが、酒を自重しようかと思うのは、更にもう少し先の話だ。


20140715,0727,0902

*2月19日付『夢じゃなかった』の前にこんな感じの事があったんじゃないかな。
 うっすらル←ナミを想定しています。別にルフィじゃなくても良いけど。
 サンジ君は酔って酔わせて何やってみたんだろうか。
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