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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*深夜、甲板、二人きり。取り留めも無い、始まり。

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 *****
      



 左斜め後ろに、ゾロが居る。俺は、ゾロの右斜め後ろに居る筈だ。
 穏やかに吹く風は潮を孕んで、陸で感じるそれよりも重い。海に出た当初はそれが気に障った、とゾロが言った。
「もう慣れちまったけどな」
 記憶の殆どを海で暮らす俺には当たり前の事が、陸から決意と共に飛び出したこいつには異なものだという事実が、彼我の差を教える。

「俺は未だに、陸地で最初に感じる乾いた風に、新味を感じるぜ」
 同じ年数生きてても、見てきたものも、感じた事も、それぞれだ。
 同じ様な図体で、同じ男でも。
 同じ海の上にいて、同じ空を見ていても、きっと、思う事は違うんだろう。

「俺が今、何考えてるか分かるか?」
「分かんねぇよ」
 だろうなァ。俺だって、分かんねェ。何で俺が、こんな事考えてるかなんて。
 ちょっと腕を伸ばしたら、空気を伝播するこいつの熱に、直接触れちまうなァ、なんて。
 伸ばしちまおうかなァ、なんて。

 後ろ手についた左手の、中指がじりじりと伸びる。空気中のこいつの熱が、一層強くなる。数ミリメートルの距離。
 馬鹿馬鹿しいや。
 空を仰ぎ見れば、出鱈目に並んだ星がちかちかと瞬いている。
「ガキん時は、星の間に勝手に線引いて、パンの形だとか、魚の形だとか、色んなモンに見立てたもんだけど」
 今は別に、何にも見えない。ただ星が、遠く手の届かない所で、俺とは全く無関係に存在するだけ。
 それよりも、左斜め後ろの熱が、余程強く俺を吸引する。

 不意に、空気が動いた。
 肘に尖ったものを感じ、それは熱を持ったこいつの肘で、びくりと強張った俺の左腕は咄嗟に体側に引きかけたが、それを阻んだのは中途半端に伸びた中指の上に乗った熱、こいつの分厚い指。振り向けた顔のすぐ側には、こいつの顔が。
 こいつの右手が乗った左手、こいつの右腕が張り付く左腕。直接触れる、熱。

 ゾロは右腕を支点に体を俺に相対させた。ゾロの左腕が俺の右脇腹を擦り抜け背中に回る。
 ゾロの左頬が俺の左耳に触れた。ゾロが大きく息を吐くのが分かる。大きく息を吸うのも。ゾロは顔の左側を擦り付ける様にする。ピアスがチャリと鳴って、左頬に金属の感触がした。俺の左手はゾロの右手の下敷きにされたまま、じりじりと伸し掛るゾロの体躯に俺の腹筋は試される。負ける気はしねェが、負けてやっても良い。ピアスの音が呼吸音と混じって懇願してるみたいだ、ここはひとつ負けてやってくれ、って。だから。じりじりと腹筋から背筋に力を移動させる、重力の後押しで俺は甲板に背中をつける。
 頭の下に敷かれたこいつの左手は、甲を強か甲板で打った筈だ。分厚いこいつの手をクッションにした俺の頭もそれを感じた。そして、その手が優しく俺の髪に分け入るのを。地肌に指の腹を丹念に擦り付けるのを。
 瞬く星を見ながら、感じた。

 俺の右手がこいつの左手と同じ動きをしたらこいつ、面食らうかな。
 俺はこいつじゃねェから、こいつがどうするかなんて分からねェ、けど。
 俺は俺のやりたい様にやる。こいつもそうだろ。お互い様だ。

 彼も我も、欲を抱えて海を行く。与え合えるなら、そうするまでだ。

 地肌に感じるゾロの指が、愛しい、と告げている様に感じられて、星が滲んだ。
 そんな訳ねェだろ、と、そうだったら良いのに、と。俺はそんなモンを望んでんのか、と。

 俺の指の腹はゾロの地肌に、何を告げているだろうか。
 こいつは、何を望むんだろうな。 
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20140322
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