『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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メリーの修繕を粗方終えると、サンジは炊事をしにキッチンへ、ゾロは鍛錬をしに後甲板へ消えゆき、工具を手にしたウソップは溜息を吐いて修繕個所を撫でている。
ナミはウソップに近付くと、訊いた。
「ウソップは、ゾロがサンジ君の名前を呼んでるの、聞いた事、ある?」
「あー? ああ、うん、あるなー」
心ここにあらずの様子で、ウソップは応えた。
「いつ?」
「…いつ?」
ナミの第二設問に我に返ったウソップは、工具の束を派手に落とした。
「ちょっと、何やってんのよ!」
危うく金槌に小指の先を詰められる所だったナミは怒鳴った。
「な、な、ななななない! ゾロが『サンジ』なんて、言う訳ない! 聞いた事なんてない!」
ウソップは散らばった工具を慌てて拾い集めると、脱兎の如くナミの前から姿を消した。
「何よ、あれ」
腑に落ちない。
聞いた事があるのは間違いないとして、それは聞いてはいけなかった、という事。或いは、聞きたくなかった、と。
一人甲板に残されたナミは、先のチョッパーの証言とウソップの態度を重ね合わせて検討した。
あんまり正解であって欲しくない答ばかりが浮かんで、ナミは困惑するばかりだった。
工具を仕舞いながら、ウソップは調理中のサンジの後ろ姿を盗み見た。
『サンジ』
ゾロの掠れた声でプレイバックされる彼の名は、暫くウソップを悩ませたし、今また悩ませている。
あの夜。
目なんて覚ますんじゃなかった。喉なんて乾かせるんじゃなかった。何か飲もうと思ったりしなければ良かったし、そのまま寝てしまえば良かった。
別に、構わない。
ゾロが、どんな声でサンジの名を呼ぼうと、サンジが、どんな声でそれに応えようと。
構わないのだけれど。
歓迎する様なものでもない。
つまり、そういう呼応だった。
色香。
海賊船には誠に似つかわしくない雰囲気を感じ取ってしまって、更にはそれが普段罵り合いやり合っている屈強な男同士から醸し出されている事に、ウソップは困惑していたのだった。
ウソップが工具をすっかり仕舞い終えラウンジを出ようとすると、ゾロが入って来た。
サンジが冷蔵庫から飲料を出し、ゾロがそれを受け取り飲む。
言葉が交わされた様子は無い。殺伐とした様子も、ウソップを困惑させた色気も。非常にニュートラルで、心地良い。
まあ、こんな昼日中に、第三者が居るのを分かって甘やかな雰囲気を醸し出されても困る訳だが。そんなのは、それこそ深夜の格納庫辺りでやってくれ。
そこまで思って、ウソップははたと気付いた。
歓迎されざるべきは、普段の殺伐とした態度の方ではなかろうか。
静かで穏やかな空気は大歓迎だ。それが、この頼れる男二人が人目を忍んで名を呼び合う結果だとするならば、それもまた歓迎しようではないか。
すっかり吹っ切れたウソップは、晴れやかにラウンジを後にした。
20120824,0829
後にウソップは、サンジに惚気られたり愚痴られたりして辟易としている所に、嫉妬したゾロの殺気の籠った視線に寿命の縮む思いをして、この日の判断は間違いだったのではないかと思うのであるが、それはまた別の話なのである。(『サンジとゾロに挟まれる、不憫なウソップ』は私の大好物であります!)
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