『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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海に浮かぶ船に帰る筈なのに何故か山を登って行ったらしい迷子を、回収するのは俺の役目だった。ルフィでは迷子が二人に増えるだけだし、ウソップは山に入ってはいけない病だとかが発病したんだとかあの野郎め。勿論ナミさんにそんな負担をかけるわけにはいかない。
「なんとかと煙は高いところに上りたがる、ってな」
山頂で佇むのを見つけ、嫌味を言いながら近づく。奴はどこか呆けた様な顔で振り返った。
「来たのか」
「お迎えがなくちゃ、帰って来れねえだろおめえは」
「そんなことはねえ」
あくまでも己の方向音痴を認めようとしない迷子は、偉そうに踏ん反り返った。
間もなく日が暮れる。既に辺りに人気はなく、山は静かに、オレンジ色に染まりつつあった。
「いいから帰るぞ」
口論するのも馬鹿らしくなって、短く宣言してから来たばかりの登山道を下りる。奴もおとなしく着いて来る。老成した様な雰囲気を持つくせに、どこか子供の様な危うさを感じさせるこいつから、目を離せなくなったのはいつだったか。思えば、最初からだったかも知れない。
夕暮れの山道は、静かだ。靴底が立てる不恰好な音だとか、僅かに荒い互いの息遣いだとかが妙に耳につく。喋ろうにも、楽しくおしゃべりが弾む様な間柄ではない。言えない言葉を抱えている身としては、黙っているのが一番安全だった。
「お前が好きだよ」
そう言ったなら、それはこいつにとって、とても大きな呪いになるだろう。俺に、好かれているだなんて。単純に仲間だと思っているだけの、平素喧嘩ばかりしている、男から、わざわざ告白する様な好意を向けられているだなんて、知ったら。流石に無下には出来まい、これからも狭い船の中少ないクルーの一員として顔を合わせ続けるわけだ。しかして受け入れる事も出来なかろう。笑い飛ばしたり馬鹿にしたり、出来る奴ではない事は、知っている。それなのに、俺と顔を突き合わせ、俺の作った料理を食べていかなければならない。
だから、言えない。呪いをかけそこね続けている。
うっかり目を離すと、奴の足音はあらぬ方向に向かおうとする。かろうじて整備された登山道だから、奴もすんなり登頂出来たし、俺もすんなり奴に辿り着けた。だというのに。
「お前どこ行こうとしてんだ」
首根っこを捕まえて俺の目が届く範囲に連れ戻す。鬱陶しそうに俺の手を払った奴は、歩みを止めて俺をじっと見た。
「どこへ行こうが」
そしてそれきり黙った。
辺りを照らしていたオレンジの光が、一層鮮やかに奴を染めていた。
「なんだよ」
と小さく呟いた。
「なんでもねえ」
と奴はまた明後日の方向へ歩き出した。
俺は慌てて奴の腕を掴む。ぎくりと強張ったのが、伝わった気がした。今度は、振り払われなかった。だから勢い、腕を掴んだまま歩くことになってしまった。こちらからのアクションで状態を変えるのは癪だった。またふらふらとどこかにいかれては困る、という建前が、用意されていた。
薄闇の頃、登山道は途切れた。まもなく町の入り口で、手を離すには良い機会に思われた。手から力を抜く。と、体が離れる瞬間、手が握られた。
「おめーが見つけて連れてくんだから、それでいいんだ」
それだけ言って手から力を抜き、町の入り口ではない方へ歩き出してしまう。
とんだ呪いをかけられてしまった、としばし呆然として、我に返る。
「そっちじゃねえ!」
奴が闇に紛れてしまう前に、見つけて連れ戻さなけりゃならねえ。
呪いをかけられてしまったからには。
やぶさかではない。
20180117,0118
utaeさんはオレンジの光が周囲を照らす夕方、静かな登山道できみにのろいをかけそこなったという話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943
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