『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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休息日でひっそりとした島から丸二日の航海を経て到着した島は、夏島の夏で、太陽は燦々と照り、風はそよとも吹かず、茹だる様な暑さだった。
ゾロを荷物持ちに食糧の調達に出たが、バザールは早朝と夕方以降の開催らしく、街はひっそりとしている。この暑さでは致し方あるまい。この島では、太陽の高いうちは休息の時間なのだ。
時間を持て余して、汗を掻きながらこじんまりとした街を歩いた。街の外れに、小さな遊園地があった。小規模なジェットコースターにメリーゴーランド、観覧車。そのどれもに子供時分縁のなかった俺は、ちょっとだけはしゃいだ。ゾロの腕を引いて観覧車に乗り込んだのは、そんな訳だ。
夕方からの営業に向けて、客のいない観覧車は試運転の最中らしい。小さなゴンドラが、ゆっくりと空に昇っている。操作盤に向かうおっちゃんに、乗ってもいいか?と聞いたら、構わねえよ、と言う。気前いいな、と褒めたら、美人の姉ちゃん連れなら断ったよ、と笑う。俺でもそうするよ気が合うな、と応じて笑いあった。その最中も、ゾロは黙って腕を引かれたままだった。
小さなゴンドラは最低限の安全を守るのみで、外気に晒されている。しかし依然暑い。やや傾き始めた太陽が目を灼く。ガタイのいい男二人がぎゅうと身を寄せ合って、更に暑い。
「お前、これ、乗ったことある?」
「初めてだな」
「俺も」
シャボンディのおっきいやつには、結局乗りそびれたのだった。それどころじゃなかった。はしゃぐ仲間の手前、はしゃぎきれなかったというのもある。
手摺に肘を置くと、火傷しそうに熱かった。苛烈な太陽に熱せられた鉄製のゴンドラに、子供を乗せるわけにはいかねえな。安全になるには、日が落ちるのを待たなきゃならないのだろう。街が日中死んだ様なのには、正しい理由があるのだ。
姿勢を少し正し、ビニルのシートに尻をつける以外は接触を避けた。隣の男がどことなく畏まって居るのも、同じ理由だろう。別に高いところが怖いわけじゃないらしい。そりゃそうか。
手持ち無沙汰で煙草に火を点ける。視線には煙を追わせた。煙よりゆっくりと、ゴンドラが昇る。
「動いてんだかなんだか分かんねえな」
問いかけともつかない小さな呟きに、不明瞭な同意の返事が小さく聴こえたっきり、会話を弾ませる気はなさそうだ。だいたいいつもそうだ。それに不満はない。それで良いとも思う。
はしゃいだ結果、こいつと二人きりでしばらくひっついてなきゃならない。正しい選択とは思えない。飛び降りようと思えば、不可能でもない高さだ。逃げようと思えば逃げられる。けれど、そうしないのがおそらく正しい。
ゆっくりゆっくり移り変わる視線の先の景色と、目を灼きつける太陽の位置がかろうじてゴンドラが動いているのだと教える。視界から隣のゴンドラが消えて、頂点に達しようとしているのだと分かった。
視線を横の男に移す。いつの間にか手摺に肘をついていた。そして、掌に頭を乗せて、俺を見ていた。俺の方を向いた手首の内側に、なにかぼこぼことした跡がついている。なんだろう、と目を凝らす。思い出した。俺の歯型だ。「しまがみえたぞー」と聞こえるまで、組んず解れつしていたのだった。思い出したら急に恥ずかしくなって、「それ、まだ痛ェ?」などと訊いてしまった。
ゾロは視線を俺から自分の手首に移し、そして俺の目に戻した。じいっと俺の目の奥の方を見透かす様にしてから、にやりと笑って言った。
「全然」
そして煙草を指に挟んでいない方の手首を急に掴み、袖を捲って内側の血管が浮き上がったところを撫でた。
「まだ、痛ェか?」
見るとそこには、ぼこぼことした跡がついていた。思い出した。ゾロの歯型だ。組んず解れつ、の結果だ。
「ぜんぜん」
ぎこちなく答える。頭が煮えそうだ。
降りるゴンドラの中では、そのままの姿勢でいた。手首に触れられたまま見つめ合ってしまった。頭の煮えそうなシチュエーション。ゴンドラが地上に着いた時には、太陽の姿はなく、代わりに、子供達がちらほらと集まっていた。その中を、そのままの姿勢で、つまり乗る時とは逆に腕を引かれて、バザールに向けて歩く。気温は下がったというのに、頭は煮えそうなままだ。
もう煮えちまってるのかも知れねえな。
20180202,0209
utaeさんは頭が煮えるほどあつい火曜日、今まさに頂点に達する観覧車の中できみの手首に歯型が残っていることに気づいた時の話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943
*#8『百合』と同軸のつもりで書き始めたけど、書いてるうちに違くなりましたね。火曜日、ってお題を消化するための書き出しだったから、まあいいか。
*シャボンディで、乗ってない…よね?(確認してない)
*飛び降り…ってシャボンディ後ならお前空も飛べるだろ(ごめん気にしないで!)
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