『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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月が輝いている。星の裏側に姿を隠した太陽が、余程強く輝いているのだろう。切った爪のように白くて細い。藍色に染まった夜の、染め残し。指を掛けたら、藍が裂けて白に飲み込まれるんだろう。きっとそうして朝が来る。それはもう少し、先。
サンジは、昼間のうち海面に下ろしていたプールにいた。
その日は、のどかな海域で程良く暑く、水浴びにはもってこいだった。海に落ちたら沈んでしまうクルーの為、ビニル製のプールを船に繋いだ。興に乗って盛大に傾ければ沈んでしまうから、念の為、サンジは海に入った。沈んでもすぐに助けられるし、泳ぎは得意だ。仲間のはしゃぐ声を聞きながら海に潜るのは、思うより楽しかった。安全な海を泳ぐのは、楽しいのだと思い出した。
はしゃぎ疲れたのか、クルーは早々に床に着き、静かな夜だった。プールの縁に頭を預け、染め残しのような月を眺める。ぷかぷかと海面に浮かぶのに、ビニルプールは具合良く、心地良かった。
不意に、船上から声がした。
「何してる」
何をしているでもない。
「別に?」
サンジは声の主を凝視した。彼は一つ溜息を吐いたようだ。腰に差していた三本を丁寧に柵に立てかけ、羽織っていた服を落とした。
扱いの、違い。彼にとって、何を置いても大事なものと、どうでもいいもの。
「俺は、どっちかなあ」
サンジは小さく呟く。煙草を船に置き去りにした所為で、少し口寂しい。
「なーんて」
忘れず己を茶化した時、彼が船から飛び降りた。どぼん、と飛沫が上がる。海面まで浮上した彼が縁に手を掛け、プールが傾いで海水が侵入する。
「冷てえよ」
「何か言ったか」
彼は海水で濡れた顔面を手の甲で拭いながら、プールに上がる。
「だから、冷てえ、って」
「その前」
あんな小さな呟き、聞こえたものだろうか。サンジは隣で同じように寝転んだ彼に、言った。
「俺は、お前の神様にはなれねえだろうな、って」
「なりてえのか」
彼は少し笑んだようだった。
「別に。…いや、なりたかねえな」
サンジも同じように少し笑う。
「まあ、神様は無理だな」
わかりきっていた事で、望んでもいない事だとしても、言い切られたら面白くはない。しかしそれを気取られるのも面白くない。サンジは口を尖らせ、冗談めかして批難した。
「はっきり言ってくれるじゃねえか」
「神様に、いかがわしいこたァ出来ねえ」
彼ははっきり笑って言うと、サンジに伸し掛かり、唇を合わせた。夜になって冷えてきた海の上で、確かに感じる熱だった。
「俺も、お前に神様なんざにされちゃ困るし、そんなもんより、ずっと」
互いを神様にし損ねた同士、海水にまみれながら熱を確かめ合う。染め残しに指を掛けるのは、もう少し、先。今はまだ、太陽も星の裏側だ。
20180808,0810
utaeさんは切った爪のような月が輝く日、海につながるプールできみの神様になれないとわかったことの話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943
*お題だけ呟いといたのにいいねをもらったので書きました。ありがとう!
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