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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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昔のファイルを漁ってサルベージ企画

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 今なら、寝惚けた所為に出来る。

 近付く気配に、目は覚めた。しかし、目は閉じたまま、寝たままの振りをした。
 そうすれば、奴はもっと近付いて来る。
 至近距離でしゃがみ込んだのが分かった。顔を覗き込んだのが分かった。腕を伸ばしてきたのが分かった。その腕を、取った。
 そのままぐいと引っ張る。
 ほんの少し開けた目が、ぎょっとした奴の顔を見た。
 反対の手で後頭部を掴み、そのまま引き寄せる。
 唇に当たってしまえば良いと思った俺の唇は、的を外して頬に当たって耳へ逸れた。

 舌打ちしたい気分で小さく丸い頭を抱き込む。
「おっ、おいっ」
 焦った声が、耳の直ぐ傍で聞こえる。
 体中の空気を吐き出して、一気に吸い込む。
 奴の体から漂う煙草の匂いが、どことなく甘い。
 いくら吸っても、胸は握り潰された様に苦しいままだ。

「てめ、寝惚けてんのか?」
 焦った声が、耳の直ぐ傍で問う。
 それに言葉にもならない、ああだかうんだか、ただ息を吐いただけの声で応じ、更に腕の力を強める。
 奴は藻掻いて、頭を振る。それに鼻先を埋めた。煙草の匂いが更に濃くなる。

 まだ、寝惚けた所為に出来る。

 口を開いて、髪を一房、唇で挟んだ。僅かに引っ張ると、奴は動きを止めた。

「何が、してえんだよ…」
 弱々しい声が、耳の直ぐ傍で聞こえる。吐息が耳に掛かる。恐らく煙草の匂いの、息が。

 腕の力を抜けば離れていってしまうのだと思えば、堪らない気分になった。
 もう、寝惚けた振りはしていられない。

 再び口を開いて、髪を離した。そのまま首を動かし耳を、唇で挟んだ。舌を這わせると、奴はびくりと肩を揺らした。

「サンジ」

 初めて奴の名を声に乗せる。
 もう、寝惚けた所為にするつもりもない。

 素早く動いた奴の頭が俺の手から逃れ、ぎょっとした顔で俺を見る。
 俺の目は既に開いている。
 目を見て、もう一度。
「サンジ」

「寝惚けてんじゃ、無え」
「寝惚けてなんか、無え」

 寝惚けた所為じゃ無い。ずっとこうしたかった。

 間髪入れずに引き寄せて告げると、奴は言った。
「寝惚けた所為にしとけば良いのに」

 唇の触れた耳が熱い。煙草の匂いが更に濃い。
 そんな反応で、そんな事を言っても手遅れだ。

 寝惚けた所為になんざ、してやらねえよ。もう、無理だ。



20120629,1105,20130529,0530
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