心は体に引き摺られる 2 2013/05/17__00:00

『心は体に引き摺られる』はこちら 4月11日付

＊引き摺られていないサンジのモノローグ

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　例えば、あいつの相手がナミさんならば。これ程美しい恋の終わりもないだろう。俺は一ミリの未練もなく身を引ける。最大限の祝福を贈って。
　仮に、ウソップだったら。それでも受容は出来るだろう。
　だが。奴だけは、駄目だ。他の誰でもない、奴だけは、嫌だ。
　つまらない対抗心？　違うな。否、そうかも。兎に角駄目だ。きっと俺の気は狂う。

　人の視線の意味に気付かない程鈍感ではない。
　ああいう男が、泣きながら、みっともなく涙を流しながら、名を呼び、誓った。それがどういう意味か分からない程愚鈍でもない。つもり。

　先に手を延ばしたのは俺だ。その手を掴んだのは、奴。
　牽制。の、つもり。俺のモノにならないのなら、誰のモノにもしたくない、奴のモノだけにはしたくない。そんな独占欲だか対抗心だか。薄昏くて反吐が出る。

　処刑台でいよいよという時、奴の名より俺の名を先に呼んだのを聞いた時。えも言われぬ悦びに震えた。そんな場合じゃないってのに。
　奴の名から呼ばれるのが当然だと思っていた。本当のいよいよ、奴の名が先だった事に胸が痛んだ。だから。だと。気付いて、自分の心根を蔑んだ。
　
　俺の背中を押してくれた人。オールブルーを笑わなかった人。「だったら一緒に行こう」と。「おれも見てェ」と。
　海賊王になる男。
　穢したくない。
　醜い欲に晒したくない。
　晒されて欲しくない。
　穢されて欲しくない。

　身代わりになれるなら。ルフィの身代わりになれるなら。
　こんな体は、どうなっても良かった。

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