書き出しと終わり #1 2018/08/15__00:00

utaeさんには「淡い夢を見ていた」で始まり、「答えはどこにもなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字程度)でお願いします。 #書き出しと終わり https://shindanmaker.com/801664

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　淡い夢を見ていた。目に慣れた、ギラついた太陽を弾く眩しい海とは違って、霞がかかっているような、曖昧な色をした海だった。それを背に、コックが穏やかに笑っていた。目に慣れた、馬鹿笑いでも女に向けるデレデレとした表情でもなく勿論、俺に向けるイライラとした態度でもない。笑っているのには違いないが、何が可笑しいでもなく、ただ笑んでいる。
　夢だという事は分かっていた。コックが俺に笑顔を向けるなど、夢でしか有り得ない。このところ、浅い眠りの端々に、そんなコックが頻繁に登場する。

　夢には願望が現れると言う。夢占いというものがあって、女どもが茶飲み話にする類のものかと思ったら、心の病を治すのに歴とした医者が使ったりもするらしい。
　覚めかけた夢を、現実が侵食する。
「なんだかんだ、性的欲求不満って事にされちゃうのよね」
「そうとも限らないわ、自分でも気づかずに求めている何かを示唆しているのかも」
　まさに茶飲み話にしている女どもに追加の茶を持って来たコックが、極度の興奮により挙動不審を撒き散らしている。
「え、あ、お、お二人は、ど、ど、どんな夢を…？」
　性的欲求、に過大な夢を見たらしい。いつものように、軽くあしらわれて終わりだ。その足で、俺を睥睨しにやって来た。
「いつまで寝てやがるクソマリモ」

　薄く目を開けると、やはり夢の中とは似ても似つかぬコックだ。背中の海もギラギラとしている。それを受けた髪が目に痛い程輝いている。逆光になった顔がどんな表情かは分からないが、どうあっても笑顔ではない。知らず溜息が出た。
　あの淡いコックを俺が求めているとでもいうのか。或いは、それが性的欲求の対象だと？

「なんだその態度。まァいい、これ飲め」
　混乱しながらも、ごとりと置かれたジョッキを傾けると、酸味と甘みと塩分の入った水だった。体に染み入る。
「干からびちまうからな」
　幾分態度を和らげたコックはそう言って、俺の隣に陣取った。
「ところでお前はそんなに寝てばっかで、一体どんな夢を見てんだよ」

　淡いお前が笑ってる。
　そう正直に告げたら、何か、変わるだろうか。例えば、現実でコックが俺に笑いかけるとか。
　再び目を閉じ、淡い夢の中を探す。答えはどこにもなかった。

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20180814

＊お題お借りしました。
　難しい！書いてるうちにどんどん着地点からずれて行く…
　ちょっとオーバーして、901文字になりました。
→読み返して、どうしても気になるところが出てきて、ちょこっと直しました。結果904文字になりました。15日17:50までに読んでくださった方、ごめんなさい。大して変わってません。