『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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負けた方は勝った方の頼み事を一つだけ聞く、というような約束だったと思う。
俺が勝った。
「タイマー、貸せ」
「勿論それが頼み事じゃねェんだろ?」と言いながらコックが放り投げたタイマーの、つまみを目盛り一つの所に合わせる。
「これからお前の一分間を、くれ」
コックは、意味が分からない、という顔をした。
「一分間だけ、黙って、大人しくしててくれ」
コックのおかしな形の眉が歪む。
「そんで、一分経ったら、忘れてくれ」
つまみから手を離す。
じじじ、と微かな音と共につまみが動き出した。
俺も動いた。
一気に間合いを詰め、コックを両腕の中に閉じ込める。
コックが息を呑んだのが分かった。
返事も聞かずに実行した『頼み事』だが、それでもコックは約束を守り黙っている。
じじじ、と微かな音は続く。
そろそろ、ちん、と音を立てて一分間の終わりを告げるだろう頃合い、俺はコックの首筋に唇を当てた。
息を吸う。
コックが硬直したのが分かった。
ちん。
控えめに告げられた、一分間の終わり。
「忘れてくれ」
そう告げて、約束の時間は終わったのに黙って大人しくしたままのコックから、離れた。
翌日。
コックがタイマーを手に、言う。
「二分くれ」
じー、とつまみを回す音。
「俺の倍か」
コックは首を傾げて言う。
「何の話だ?」
しっかり、忘れている、というアピールをして、コックはつまみから手を離した。
「黙って大人しくして、忘れろ」
コックの腕の中で聞く。
じじじじ、ちん。
音と共にコックは離れて行った。
翌日。
タイマーがそこにあった。目盛り三つの所につまみを合わせて見せ、近寄る。腕を回す。首筋に唇を当てる。
今回コックは硬直などしなかった。
俺の首筋に柔らかいものが当たる。湿った熱がそこを這う。
じじじじじ、ちん。
二人同時に離れる。
翌日。
コックの手には、目盛り四つの所につまみを合わせたタイマー。首筋に這わせた舌は、顎へ。唇へ。
翌日。
目盛り五つの所につまみを合わせたタイマー、初めから唇を目指す唇。
日々繰り返される、接触と忘却。
タイマーの回る音は一分ずつ長くなり、60日目。コックがタイマーをセットした。
60分。一通りの事は出来てしまうし、して来た。時間が終われば、忘れる。
——決して、忘れていない。昨日より深く、昨日よりヨく。忘れていては不可能な、探り合う接触。
ちん、と音を立てて、終わった。
「このタイマー、最大60分なんだけど」
体を離したコックが言う。
「明日、また一分からスタートか?」
「忘れたんじゃねェのかよ」
俺の不満気な声に、コックは口端を下げ肩を上げて、すっとぼけたポーズをとった。
「忘れてくれって言ったろ」
軽い抗議には、鼻から息を吐き緩く頭を振って、呆れた、のポーズ。
「聞ける頼み事は一つ、だ。一分間大人しくしてたんだから、それでペイ。後の『忘れてくれ』は、俺の自由裁量だ」
「で?忘れたのか?」
「どっちだっていいだろ?」
「ほんとに、忘れて、欲しいのか?」
着衣を整え終えたコックの手が俺の首に掛かり、妖しく蠢く。
「いつまで忘れてなきゃならねェ?」
仕掛けたのは俺で、仕掛け返したのはコック。どちらも拒まなかった。どちらも止めなかった。30回ずつの機会、一度たりとも。
「忘れる必要が、あるか?」
立て続けの問い掛け。
答えは、疾っくに出ている。
拒まず、止めず、60日続いた、一分間の集積。
「忘れてくれるな」
コックの目を見て、言う。
コックは初めて見るような、笑顔を見せて言った。
「忘れて堪るか」
20140118,0119,0120,0121
*「メモリ」を「目盛り」に修正しました(0123)
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