『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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ラウンジ前、扉一つ分右舷寄りに座り込み、手摺に凭れて目を閉じていた。
眠るには至らず、然りとて覚醒とは程遠い思考の揺蕩い。
ラウンジの扉が微かな音を上げて静かに開く。内側から開かれたそれは、人一人の移動を経て、そっと閉じられた。
俺の思考を揺蕩わせる張本人が立ったのは、扉一つ分左舷寄り。扉三つ分の距離。僅かに顔を傾け、薄らと目を開ける。
燐の匂いがふと漂い、煙草の匂いが棚引いた。
存外静かな男だ。
何も言わずに海の彼方を眺めている。
俺がここに居て、手前を見ていると知って、飾らずにただ存在する事を手前に許している。
「俺ァ起きてるぞ」
「…知ってるぜ?」
何を今更、と言外に匂わせて、顔も注意も海の彼方に向けたまま、辛うじて聞き取れる声で。
「てめェだって、知ってンだろ?」
俺が手前を見ていると、知られていると、知っているのだと。
「…まァな」
知っている。ただ少し、確信が持てなかっただけだ。お前がそうする理由が、掴めないだけ。
「良いのか」
俺が、見ていても。
静かに口にする。この静けさを保てば、静かに飾らない言葉を返されると思った。
しかし、紫煙ばかりが目の前を行く。煙草一本が、灰になるまで。
許可も拒否もされなかった行為は、更に思考を揺蕩わせる。
面を向けて微かに見上げる、扉三枚分の距離の先。静かな束の間を、俺に見られる事の是非を、考えているとも思えない、静かな横顔。
それが、俄にこちらを向いた。
「好きにしろよ」
我知らず、瞠目した。
「てめェはてめェの好きにすりゃ良いさ」
俺の瞳に映る手前を覗き込む様な慎重さで、言う。
俺の好きに。
それは一体何を許されているのだ。
俺が言葉を継ぐ前に、手摺で煙草を揉み消し、あいつはラウンジの扉を開け、体を入れた。
「俺は俺の好きにする。まずはてめェがどうしたいか決めろよ、話はそれからだ、ろ?」
頭だけ扉の外に出して言ってから、あいつはラウンジに消えた。
煙草を揉み消す所為で所々焦げた手摺は、そこがあいつの定位置だと知らせる。
あいつがそんな不躾を働くのは俺の前でしかないから、それを知るのは俺だけだ。
ウソップに教えたら泣く。ナミに教えたら喚く。容易に想像出来るそれが、そうしない理由ではない。
俺とあいつだけが知る、この船の秘密。ささやかだが、確かに存在する秘密を、二人だけが共有している。
そこに、もう一つ、秘密を。
重ねても赦されるか?
…何を?
煙草一本分の時間、ただ見る事を。飾らない手前を、見られる事を。
飾らない手前を俺に見られても構わないと、お前が思う事を嬉しく、思う、俺を? 俺は、手前に許すのか?
紫煙の残像の中、思考は揺蕩う。
ラウンジからは、夕餉の支度の音と匂いが漏れ漂う。
あいつは確かに存在して、俺はそれを、…好ましく、思う。
それは、ささやかな秘密。俺にさえも秘していた、俺だけの。
ささやかだが、確かに存在する秘密を、二人の秘密に、しても?
思考は揺蕩う。
この思考が揺蕩うのを止めた時。
話はそれから、だ? 好きにしろ、と言っておいて? ふざけるな。話し合いの余地があるとでも?
俺に肚を決めさせておいて、それは無ェ、だろ?
紫煙の残像は、影すらも消えた。壁越しに実在を主張する存在だけが、鮮烈になり、思考は揺蕩いを止めた。
もう、肚は決まったも同然だった。
20140313,0314,0414,0415
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