『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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十三夜。叢雲の一つもない夜空に、真円に少し欠ける月が浮かんでいる。
「片見月は縁起が悪ィんだ」
手酌で盃を満たしては干していたゾロが、ぼそりと言った。
ひと月前の十五夜は生憎見逃している。月見どころの騒ぎじゃなかった。お互い消息も分からず、どちらも危うく死にかける所だったようだ。どうにか無事だと確認出来て、日常が戻り、やっと笑い話にも出来る。
「今年は強制的に片見月だなァ」
笑いながら、グラスに僅か残った月の光色をしたワインを月光に透かしてから飲み干す。そろそろお月見も切り上げる頃合いだ。
「縁起は悪ィかも知れねェが、片一方でも穏やかに月見酒を楽しめるんなら、僥倖じゃねェか」
意外と縁起だとかに拘る男を慰めてやるが、どうやらそれでは納得しないらしい。
「来年の十五夜に月見すんのでチャラにならねェか?」
「気の長いこって」
鬼も呆れて笑うの忘れちまうんじゃねえの。
そう言おうとしてゾロを窺い見ると、ゾロは真剣な目に月光を映して言った。
「来年の十五夜、付き合え」
そんな、遠い約束。
生死さえ確約出来ない暮らしの中で、心変わりが無い、と。共に月見をしたい相手が互いだ、と。お前は俺と約束したいの。
「十五夜だけで、良いのかよ」
思わずか細い声で訊いた俺に、ゾロはリクエストで返した。
「芋炊けよ。で、十三夜は栗だ」
「そんでまた、次の年の十五夜も?」
ゾロは天を仰いで口を開け、その上で徳利を逆さまにして振った。漸く落ちた最後の一滴は唇に落ちたらしい。べろりと舌で拭ってから、俺を見る。
「片見月は縁起が悪ィからな」
じりじりと太る月が、柔く笑うゾロを照らした。
20150821,1024
*「縁起が悪い」にかこつけて約束を取り付けたいゾロは可愛いなと思ったんです。
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