『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「ヒカルさん、困りますよ」
本日の仕事はこれにて終了、今日も良く働きました——伸びをしながら客の居ないロビーを通りかかると、フロントが心底面白くないという顔をして言った。
「へ?何が?」
フロントが片手を口の端に当て、ちょいちょいと手招きをする。内緒話? 周りには誰も居やしないのに。
耳の方から近寄ると、潜めた声で告げられた。
「サンジを、って指名したお客様が御出ででした」
「あー…」
心当たりは一人だ。
「髪、緑色だった?」
「はい。結構良い体格の、比較的若い方でしたね。お知り合いなんですか?」
「何日か前の一見さん。飛込みだったんじゃねぇかな」
「それで、本名教えたんですか」
フロントは非難がましい。
この店はそういう所が結構煩い。ちゃんと線を引けと厳しく指導された。尤も、他の店の事など知らないが。
「あー、何だったかの弾みで。今後気をつけますごめんなさい」
ぺこりと頭を下げて見せると、フロントはやれやれという芝居でもしているみたいに態とらしく溜息を吐いて俺を解放した。
「ヒカルさん、今日も来てましたよ、緑の人」
ゾロと名乗った恋人ごっこ希望のお客さん。
彼が来たかどうかを話すのが、ここの所フロントとのコミュニケーションの一環になっている。と言っても、殆ど毎日顔を出すらしいが、飛込みで俺を指名するのは、なかなか適う事ではない。俺は結構な人気商品だから、大抵予約で埋まっている。
「予約入れてやれば良いのに」
「言ったんですけどね、『いや、いい』の一点張りで。なんか願掛けでもしてるんですかね」
俺は、俺が『サンジ』だと知って来る客の、姿を見る事も適わず、気配だけ、感じて仕事を終える。
知らず漏れる小さな溜息に、フロントがこっそり笑ったのを、俺は気付きもしなかった。
***
いつもの様に店を訪れたゾロが、いつもの様に「ヒカルを」と言おうとした所で、すっかり顔馴染みとなったフロントが、に、と笑った。
「空いてますよ」
思わず瞠目したゾロに、フロントは益々笑みを深くする。勿論笑い声を立てたりはしないが。
予約もせずにヒカルばかりを指名しては予約で埋まっている事を確認するだけですぐさま帰る、このなかなかの男前を、フロントはこっそり気に入っていた。キャンセルの電話の後、ヒカルの予約を訊ねる電話を黙殺してしまうくらいには。
予想通り来てくれて良かった。偶々今日この時間、この客が来なければ、人気商品に茶を挽かせてしまう所だった。それが自分の不手際であったと知れたら、マネージャーにドヤされるくらいでは済まない。
今度、ヒカルに何か奢らせても良いかも知れない。
フロントは、ここの所のヒカルとのコミュニケーションを思い返し、リストで口元を覆って一層にんまりした。
ヒカルだって、そうとは言わないまでも、彼の来店を心待ちにしていたに違いないのだ。
フロントは、彼は今日も来たが予約を入れる事無く帰った、と告げる度にヒカルが浮かべる表情を思い返す。あれは、安堵と失望の綯い交ぜになった、とても可愛らしい表情だ。こんな場所には似つかわしくない。とても愛のないセックスを生業とする男とも思えない——まるで、恋でもしているみたいな。
そこまで思い起こして、フロントは心臓が冷える心持ちがした。それは、拙い事なのではないか。それこそマネージャーに知られたら、一回分の儲けを減じたどころではない損失を、なんと言って咎められるか。
ヒカルのセックスは、金銭に交換されねばならない。
商品が客に恋をして、店の利益になる訳がないのだ。
20131105,1106,20140603
*半年以上放置とか…申し訳ない。ご要望いただきありがとうございました。続きも、可及的速やかに…出来るかな… 気長にお待ちいただけると幸いです!
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