『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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その男は、突然現れた。
—— 第一夜 ——
駅から商店街を抜けて、まっすぐ進んで幹線道路を一本越え、同じくらいの距離を更に進んで角を一つ右に曲がったその先に、俺の住むアパートはある。閑静な住宅街、と言えば聞こえは良いが、つまり駅から遠いので家賃も安い。
終電を一緒に下りた数少ない乗客も散り散りに家路を辿り、行程の半分くらいで周囲に人は居なくなる。この時間はいつもそうだ。車だって滅多に通らない。俺は一日労働に勤しんだ自分を労る為に、煙草を燻らせゆっくり歩く。善良な住人は夢の中。世界に俺一人みたいな静寂。雑多な今日をリセットするその時間を、俺は結構気に入っていた。
分厚いコートを重く感じる様になる季節。
最初で最後の角を曲がってアパート迄の間に一つきりある街灯が、数秒の間隔で明滅を始めた。それに目を遣り、その下に、男が一人、立っているのに気付いてぎょっとした。
一瞬歩みを止めてしまったのが気恥ずかしい。ただ何となくスピードを落としただけ、といった体を装い歩を進める。
しかしこんな時間にこんな場所で何をしているのだろう。不審だ。歩調を更に緩めてさりげなく観察する。
男は心持ち俯き、寒いのか、薄手のコートの前を掻き抱く様にしている。確かに、深夜はまだスプリングコートでは心許無い。
上背は俺と同じくらい、体格はそこそこ立派。年寄りではなく、子供でもない。俺と同じくらいの、青年。
こんな時間にこんな場所で、というのとは少し違う違和感に首を捻る。何がおかしいのだろう。
髪の色は確かに一般的ではない様に思うが、夜目にははっきりしない。街中に居て不審な点は無いのではないか?と視線を徐々に下げて行くと、…あった。コートと靴の間が、肌色の脛だ。半ズボンを穿く様な季節でもなければ、年齢でもなく、何よりコートも靴も、半ズボンには似合わないビジネス仕様だ。
それに気付いたのは、もう数歩で男と擦れ違おうかという時。街灯が明滅を止めたのに気付き、ふと光源を見上げる途中、男と目が合った。
スポットライトに照らされた様な男は、ゆっくりと口の端を上げ、徐に、コートの前で縮めていた腕を、ば、と開いた。
握られていたコートのフロントもそれに合わせて開かれ、中から肌色が覗いた。俺の目にはスローモーションで徐々に肌色の面積が増えていったが、実際には一瞬だったのだろう、コートの裾が開かれた勢いではためいている。
目の前に提示されたのは、紛う事無き男の裸体、だった。
余りの事に、足が止まる。
男も俺の顔を見詰めたまま、動きを止めている。前面の開かれたコートから立派な裸体を晒して。
そういうのは、うら若き乙女に見せつけて悲鳴を上げたり真っ赤になったりする反応を楽しむもんじゃねェの?許し難い悪行ではあるが。
ムキムキと動きそうな胸筋も、バキバキに割れた腹筋も、立派にエレクトしたソレも、男相手に見せつけて何が楽しいんだ、精々劣等感抱かせるが関の山だろ、俺はそんなんじゃ劣等感なんて抱かねェけどな?俺だって負けてねェしな?
こういう手合いは、何より反応される事を喜ぶと聞く。通り掛かったのが、悲鳴も赤面も無しの男で、残念だったなァ?
実際には大した時間じゃないだろうが、先程からスローモーション仕様の俺にしてみたら大した長時間に感じられた。
このまま立ち竦んでいる訳にもいかないが、このまま通り過ぎても直ぐにアパートに着いてしまう。この露出狂の変質者に家を知られるのは、リスクが高すぎるだろう。脚力には自信があるし走って逃げるか、いや何で変態の為に疲れている俺がそこ迄せにゃならんのだ。携帯を取り出して警察に通報しようか、しかし飛び掛かられて寝技にでも持ち込まれたら厄介そうな体格だ、多少の応戦なら出来るだろうが、裸のソレを擦り付けられでもしたら堪らない。
逡巡していると、街灯が再び明滅を始め、男は、は、と我に返った様にコートの前を掻き合わせた。そして俺の顔を、き、と睨みつけると、回れ右をして走り出した。アパートの前を風の様に通り過ぎ、角を右に曲がり、はためくコートは瞬く間に視界から消える。
危なかった。逃げてたら後ろから飛び掛かられて捕まってたかも知れねェ。
一応気配を確認しながら、とぼとぼとアパートの外階段を上る。なんか凄ェもん見ちまったなァ…。春だからなァ…。あったかくなると、頭のおかしな奴も出て来るなァ…。
ぼんやり見上げた空では、撓んだ月が霞んで見える。
俺は悲鳴も赤面も無しで捕まる事も無く無事家に辿りつけた安堵でか、どっと疲れて布団に潜り込んだ。警察への通報を忘れたと気付いたが、被害に遭う様なレディはこんな時間にこんな場所通らないだろうし、まァいいか、と忘れたままにした。疲労は限界を超えており、これから事情聴取とか冗談じゃねェ。
しかし凄ェ筋肉と、凄ェ…イチモツだった…。あんだけ立派なモン持ってりゃ、見せつけて自慢したくもなるんだろうか。…否、全然、全く劣等感なんて持たねェよ?羨ましくなんかねェよ馬鹿。
その夜、眠りはちっとも訪れず、疲労と厭な残像だけが俺に残された。
→ 2
20140419,0420,0421
*続く、のか?
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