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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*ゾロサンに於けるウソップの重要性ったら

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 日付の変わる頃、一旦はボンクに納まり夢の中へ旅立ったウソップは目を覚まし、再びの眠りがなかなか訪れないのに辟易とした。夕食後にラウンジで武器を改造したが、その際部品をばら撒いた。ふざけた船長の体当たりの所為だ。航海士の怒号を受け、慌てて拾って拾わせて、碌に数も確認せずに引き上げたけれど、全てを回収出来たのだろうか。そんな事が気になりだしたら、ますます目が冴える。気になる事があって眠れないのなら、確かめれば良い。シンプルな結論を出したウソップはボンクを抜け出し甲板に出た。
 風の強い夜だった。ラウンジの明かりが丸窓から甲板を照らす。少し光量を落としたそれは、サンジの在室を告げていた。仮にサンジでなくとも誰かの。
 話し相手が居る事を喜んだウソップがラウンジの扉に手をかけた時、少し顔色が悪い様に見えるサンジが、そこから出て来た。普段の身のこなしとは違って随分と愚鈍なそれを、ウソップは咄嗟に避けた。サンジは虚ろな瞳をウソップにちらと向け、逸らしながら「悪ィな」とでも言う様に片手を上げた。但し無言で気怠げだったから言いたかったのは「邪魔だ退け」だったかも知れない。
 そんなサンジに遭遇したのが自分で、つまりナミやロビンじゃなくて、良かった、とウソップは思った。どんなに辛くても、相手が女であればサンジは無駄に愛想を振りまく。正しく無駄に。それはサンジの良い所でもあるが、悪い所でもある。悪い所だと苦々しく思っているのは主に彼に懸想する剣士なのだが。
 あいつどっか具合悪いのかな、大丈夫かな、まあ人一倍丈夫なサンジだしな、一晩寝れば治るだろ、いざとなったらチョッパーも居るし。
 仲間への厚い信頼を基にした感慨を抱きながら、サンジが茫と甲板を歩き男部屋へ入ったのを確認すると、ウソップは本来の目的であるラウンジ訪問を果たした。
 果たしてそこには、ゾロが居た。先程のサンジよりも酷い顔色をしていた。
 扉を、つまりサンジが出て行った所を見詰めていたらしいゾロは、ウソップの姿を認めて瞠目した。ウソップは、ああ、と天を仰いだ。良くない所に出くわした、と。
 恐らく、思い詰めて愛の告白をしたゾロを、青天の霹靂だったサンジがこっぴどく振った、そんな所だろう、と。クルーにとって周知の事実だったゾロの想いは、肝心の想い人には全く伝わっていない様だった。サンジには男である自分が男に懸想されるなど思いも寄らない事の様だ。それはとどのつまりサンジにとって、男である自分が男に想いを寄せるなんて有り得ない事だ、という事を示している。
 初めから、望みなんて欠片も無い恋だったじゃないか。
 そう慰めるのはゾロにとって慰めになるだろうか、それとも傷口に塩を塗り込める様な事だろうか。
 ウソップは逡巡し、ここはひとつ何も見なかった事にしよう、と結論づけた。喉が渇いたから水を飲みに来たのだよ、という風を装って。
 しかしそんな虚構が通用する相手ではないのだ。ウソップはあっさりゾロに捕獲され、深夜のラウンジで、酷い顔色をした魔獣と膝を突き合わせる事になった。

「なっ!」
 思わず大声を上げたウソップの口を、ゾロの手が覆った。
「しっ!」
 ウソップを諌めつつ、ゾロはきょろきょろと周りを窺う。ふがふがと、自由にならない呼吸が苦しくて、ウソップは身を捩る。その間も、ゾロの告げた『事実』をどう受け止めたものか思案していた。
 やっと離れたゾロの手が打震えているのを見て、ウソップはそれが『事実』であると信じる気になった。

 ゾロはウソップに、ぼそりと打ち明けた。
「コックが、俺を好きだって言った」
 勝手に限界まで開いて丸くなったウソップの目を見て、ゾロは言った。
「驚くのは分かる、俺も驚いてる、でも『事実』だ」
「お前、自分の気持ちは伝えたのかよ?」
 ウソップはゾロに、こそりと訊いた。ゾロはふるふると頭を振った。なんだその子供みたいな仕草。
「言う前に、出て行っちまった」
 ウソップはラウンジを出るサンジの、顔色の悪さを思い出す。
「お前、サンジの事、好きなんだろ?」
 ゾロはこくんと首を振った。だからなんなんだよその子供みたいな仕草。
「何でお前は、酷ェ顔色してんだ」
「あいつ、本当にコックか?」
 ゾロはいよいよ重大な秘密を口にした様な声の潜め方をした。
「お前今擦れ違ったろ?あいつ本当にコックだったか?」
 つまりゾロは、サンジがゾロを好きだなんて有り得ない事だと思っているのだ。自分を好きだと言うコックが、偽者であるという疑念を持ってしまうくらい。
「お前…可哀相な奴だな…」
「アァ?」
 思わず呟いたのを聞き漏らさず威嚇したゾロに身を震わせながら、しかしウソップは大事な仲間の恋を応援しない訳にはいかなかった。
「サンジの奴、お前に振られたと思ったんだろ」
「あぁ?」
 同じ言葉なのにどうしてこんなにも意味を違えるか、と寧ろ感心するくらい、ゾロは先程の威嚇とは似ても似つかぬ間抜けな発音をした。
「あいつ、酷ェ顔色してたぜ?」
 ゾロは相変わらず、理解出来ません、と言う様な顔をしている。
「好きだって言ったのに、相手が酷ェ顔色で黙っちまったら、失恋した、と思うだろ?」
 ゾロはこくんと首肯く。
「サンジだぜ?あの女好きが、男のお前を好きになっちまったって自覚したら、葛藤しただろうな。それ乗り越えて告白したんだぜ?すっげェ勇気が必要だったろうよ。それに何も応えがなかったんじゃ、振られたと思って具合悪くなるのも当然だ」
「あいつ、具合悪ィのか?」
 ゾロが勢い込んだ。
「お前と同じくらい、酷ェ顔色で、ふらふらしてたぜ?あいつひょっとしたら、寝込んじまうんじゃねェかなァ?」
 ウソップは心持ち大袈裟に、サンジの様子を話してやった。ゾロの顔色がますます酷くなる。
「ど、どうすれば、良い…?」
「サンジなら男部屋に入った所だぜ?どうせまだ眠れてねェだろ。行って「好きだ」って一言、言ってやれば万事解決だ」
 ゾロは一つ首肯くと、ラウンジを飛び出して行った。先程までとは打って変わって、酷く男前な顔で。

 暫く経っても、意気消沈したゾロも、怒り心頭に発したゾロもサンジも、ラウンジには戻って来なかったし、二人が喧嘩している様子も無かったので、どうやら二人は上手くいったらしい。
 俺は仲間二人の顔色を救い、恋の成就の手助けをしてやった、勇敢な海の戦士だ。
 ウソップはすっかり満足した。
 後に、恋の成就した二人それぞれから聞きたくもない惚気話を聞かされる羽目に陥ったウソップが、この晩の二人より更に酷い顔色をする羽目に陥るのは、また別の話。


20130927,0930,20140403

*『別の話』は、2013年5月16日付『惚気話
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