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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル
*2013年10月24日付『亀戸天神』の、いずれ別れる二人の始まっても居ない頃の話

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 サンジは酔っ払うと、俺に電話をかけてくる。車で送れ、と。タクシー代わりだ。そういや昔、アッシーなんて言葉があったか。
 特に用事もないし、運転は嫌いじゃない。それに。少しの時間でも同じ空間に二人きりで居られる、それを。その相手に俺を思い出すサンジを。拒否するなんて出来っこなかった。

 指定の場所に辿り着くと、サンジはへらへらと手を振りながら助手席側に回り、ご機嫌で乗り込んで「おーおーご苦労!迷わず来れたか」と陽気に言った。それから勝手にカーラジオを付け、特に意味のある訳でもなさそうな選局を済ますと、背凭れにぐったりと体を預けた。
「飲み過ぎちゃってよう、ゾロなら起きてっかなって思ってよう」
「ああ。分かったから大人しくしてろ」
 こいつが誰とご機嫌で飲み過ぎようと、俺には関係が無い。ご機嫌で飲み過ぎた後、俺の顔を見るのを厭わない、それだけが拠り所だ。随分と情けない。

「悪かったな。用事とかあったんじゃねえ?」
「別に。何もねえよ」
「そ…ゔー」
 赤かった顔が青褪めている。
「吐くのちょっと待てよ、今停めるから」

 路肩に停める。ビニル袋を渡してやり、襟元を弛めたサンジの背を摩ってやる。
 嫌な匂いが一瞬立ち上り、それは直ぐに開け放した窓から出て行った。
「あーすっきりした」
 サンジがビニル袋の口を縛る。
 来がけに買ったペットボトルを渡してやる。
 さんきゅ、と言ってぐびりと飲んだサンジの喉元を、見るとはなしに眺める。 

 カーラジオからは低く、せつないバラードが流れている。追い越して行く車の走行音に紛れて、そのせつな過ぎるバラードは、俺の手をサンジに伸ばさせた。

 俺の指の背が、サンジの頬を掠める。

「ん?どうしたよ」
「や…、顔色、戻ったな、と思って」
 臆病な俺の手は、動きを止めずにシフトレバーに乗った。
 その手を、サンジのいつもより熱い手が、包む。
「何だよ」
 俺の声が震えた事を、サンジは無視した。
「お前の手、冷てえな」
 手より熱い頬に導かれる。
「お前が飲み過ぎなだけだ」
 声の震えは無視されたんじゃなく、届かなかったのかも知れない。
 サンジは目を閉じて「気持ち良…」と呟いた。

 サンジはもう寝てしまったのかも知れない。薄く開いた唇から、ゆっくりとした息が規則正しく吐き出される。
 その微かな圧を唇に感じて、そこまで近付いていた事に気付いた。動きは止まり、やがて呼吸の感じられなくなる距離に、戻った。
 既に俺の手に添えられるだけになっていたサンジの手を、ゆっくりと外し、俺は静かにアクセルを踏んだ。

 せつな過ぎるバラードなんかに、壊される訳にはいかなかった。


20130404,0406,20140206
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