ファーストキスの味 2014/01/29__00:00

＊現代パラレル（ゾロが生まれて以来の幼馴染）
＊小6と高校卒業後

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「ファーストキスはキャラメル味だった」
　サンジは笑って言った。
「二度目も、三度目も四度目も」

　俺がキャラメル口に入れたらさ、お前、あーあー、って言って俺の唇摘んだの。これ？って、キャラメル、ベロに乗っけて口の外に出したらさ、お前掴もうとして指突っ込もうとしたんだよ、俺の口ん中に。俺、一旦口に入れたもん手で触られるの嫌でさ、ベトベトだし。慌てて口閉じたら、お前ぶわっと目に涙が溜まってさ、大泣きの寸前で。こりゃヤバいと思ってさ、お前の手、掴んでから、もう一回ベロにキャラメル乗っけて口の外に出してやったの。そしたら、お前、口近付けてさ、俺の舌ごと、キャラメル食ったんだよ。

「それが俺のファーストキス」
　サンジはまた笑った。
「で、お前のファーストキスな？」

　でさ、お前、俺からファーストキスとキャラメル奪っといて、すっごい嫌な顔して口を開けたんだ。ベロの上にキャラメルが乗ってて、それ、べー、って一生懸命外に出そうとすんの。でも、ぺっ、って吐き出したら怒られるから。俺に。何度もやって何度も叱られたからな、学習したんだよ、赤ちゃんロロは。でさ、我慢したんだよ。きっと、口に合わなかったんだなー。で、俺もさ、やっぱり手では触りたくないワケ。と言って、捨てたくもないワケ。で、仕方なく、口移しで俺の口に戻してやったんだよ。これが二度目のキスな。キャラメルの味がさー、なんか、薄ら呆けてて、お前の唾液で薄まっちゃってるんだよ、ビミョーな気分だったね。

「幾つん時の話だよ」
「んー、お前まだ歯が生え揃ってなかったからー、…二歳ぐらい？」
「物心もついてねぇ。そんなのノーカンだ」
「うん。俺もそれが良いと思う」
　一転、神妙な顔になったサンジに、考えを改めた。
「やっぱそれがファーストキスで良い」
「なんだよそれ」

　でな、別の日にな、同じ事が起きたんだよ。またお前、俺の口の中のキャラメルを欲しがったの。俺さぁ、こないだと同じだーと思ってさ、もう一個あった、まだ食べてない方のキャラメルをやろうとしたの、お前に。そしたら、嫌がるんだよ。頑として受け取らねぇの。でも、俺の口のキャラメルは欲しがんだよ。また泣きそうな顔してさ、しょうがねぇから、やったさ、三度目のキス。で、すぐに四度目のキスだよ。懸念通り、すぐに、べー、って。お前何がしてぇんだよ、って聞いたって答えやしなかったけど。

　そりゃ、お前とキスがしたかったんだろ。

「五度目は？」
「俺が同じ過ちを何度も繰り返すと思うか？」
　サンジが煙草を咥えて火をつける。

「キャラメル、持ってねぇの？」
「ねぇよ」
　サンジはそっぽを向いて煙草を吹かした。

　五度目はちゃんと、覚えてるキスにする。もう、物心はついている。
　物心ついてからカウントの、ファーストキスは。
　煙草味だって、構わねぇんだ。
　相手がお前なら。

　そう言っても躱されなくなる時を、俺は待っている。見逃さない様に、虎視眈々と。

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20140123

＊2013年9月13日付『陽は沈む』12月25日付『サンタの道標』の二人です。