足首 2013/12/12__00:00

12月5日付『オサカナブルー』の続き

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　掴んだ足首をどうしたら良いのか、判断つきかねていた。

「別に、普通の足首だろ」
　俺の手の中でくるくると回される足首は、確かに何の変哲も無い。
　踝が、掌を転がる。
　確かめる様に指を展げてみれば、白い肌に青い血管が透けて見えた。
　この中を通う血は、本当は赤い。
　刃を当てれば、赤い筋が白い肌を走るだろう。

　それを見たいと思うなど。
　どうかしているとしか、言い様が無い。

「いい加減離せよ」
　一際激しく回された足首は、俺の手から逃げてしまった。
　不意に軽くなった手をどうしたら良いのか、判断つきかねた。
　動けずに居る俺に一瞥くれて、あいつは煙草をふかしながら去る。
　濡れた足跡が甲板に残る。
　随分がに股で品の無い歩き方なのに、残されたそれは美しいかたちを成している。
　水分が太陽に灼かれて消えるまで、それを見ていた。
　水は蒸発してしまえば跡形も無い。
　血なら、どうか。
　想像した。あの足首から流れる血液が血溜まり、足跡を残す様を。
　乾いて酸化し、色を変える、消えない、跡。

＊＊＊

　どぼん、と水音がした。今度は誰だ。
　柵に刀が立て掛けてある。
　泳げない訳もあるまい。覗き込むウソップも、大丈夫かーと暢気に声を掛けている。
　心配するまでもないだろう。
　余程心配なのは、あいつに掴まれた俺の足首の方だ。
　熱が治まらない。
　あんな風に人の足首を扱っておいて、暢気に水泳かよ。いい気なもんだ。
　どうしてくれんだ、この熱。

＊＊＊

　危なかった。
　早急に頭を冷やす必要に駆られ、海に飛び込んだ。
　衝撃のまま沈むに任せ、浮力に任せて海面に戻る。
　垂らしたままだったロープをよじ上る。体は只管重く、狙い通り、雑念は霧散した。

　海はどこまでも青く、掴める所は何も無かった。

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20131206

＊ゾロは病んでいるね。サンジ君、逃げた方が良いね。