『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「ナミさん、俺ァ怒ってんだぜ?」
俯き加減で紫煙の後に吐き出された声の冷たさが、その言葉が冗談でない事を教える。
「え…、なに…?」
滅多に無い事だ、サンジがナミに与える声が、そんな温度である事は。
ナミがサンジを怖いと思う事など、更に滅多に無い事。過去をざっと振り返っても思い出せないから、それはひょっとしたら初めてなのかも知れない。
「あれァ無ェよ」
「…アレ?」
「ぐるわらの一味、ってのは」
麦わらの一味として出航する訳にはいかない。船長が居ない船を出す事など。しかしあの時、行かない訳にはいかなかった。ここで無惨に殺される訳には。
咄嗟に出た、まるで、言葉遊びの様な。
逃げる為の、方便。
船の行き先は、いつだってルフィが決める。
私はそれに向かって船を動かす。航海士は、船長が居なくちゃ何も出来ないの。だから。
そんな詭弁は、口に出す事も許されない。
私達の船長は、ルフィ唯一人だから。
「ベッドの中でなら、いくらでも“キャプテン”扱いしてくれて、構わねェけど?」
サンジが左目を撓めていやらしく曲げた唇を、ナミは思い切り抓ってやった。
いつだって、そうやって、逃げ道を用意してくれる。
それに救われているのだと、知って、やっているのだろうか。
そんな所にだって救われてしまう。いつも、助けられて。
ナミは、自分が戦闘員ではない事を知っている。航海士である事を、誇りに思っている。私が乗った船に渡れない海は無い。天候すら操れるのだ。私には私の戦い方がある。
それでも、悲鳴を上げるばかりだった自分が情けなかった。怯えるばかりで、何も出来なかった。そりゃ、七武海相手に何をしろと言うのか、とは思う。それでも。
サンジは空を駆けて来た。自分を置いて逃げろと言った。目の前に、死を迫らせて。
「俺は何があってもナミさんを守るよ」
唇の端を赤く腫らして、サンジは言う。俯き加減に。
「でも、船長が居ない今、船を動かすのは、ナミさんだ。俺には、出来ねェ」
「俺に出来ねェ事は、ナミさんがしてくれ。ナミさんに出来ねェ事は、俺がやるから」
サンジの左目は撓んだまま、その光を柔らかく変化させる。
サンジ君が、私の為に死にかけたのは何回目?
私の命の代わりに、自分の命を差し出したのは何回目?
その度に、私がどんな思いをするか、知っているの?
サンジがそんなつもりではない事は、ナミも知っている。サンジに死ぬ気など微塵も無いだろう事は。
それでも、端から見れば同じ事だ。
サンジはナミを庇って死にかける。
サンジは知っている筈なのに。ナミの養母は、ナミを庇って死んだのだと。
「サンジ君に出来る事は、私を守る事じゃないわ」
ぽかんと口を開けたサンジに、ナミは言う。
「死なないで」
サンジの開いていた口は、ゆっくりとへの字に曲がった。
「死なねェよ?」
「宜しい」
ナミの涙はもう乾いた。本来の力強さを宿したナミの瞳に、サンジは安堵する。
「ではナミさん、指示を」
「そうね、先ずはこちらの状況を工場破壊チームに伝えましょう。サンジ君お願い。私は操舵するわ。ブルックは見張りを。チョッパーはサンジ君の手当をして」
「了解!!!」
船は一路、ビブルカードに従いゾウを目指す。船を動かすのは、麦わらの一味・サニー号安全確保チーム。
20131029
*タイトルは『ぐるわらの一味』にするつもりでしたが、72巻に収録されないじゃん、コミックス派の方にタイトルでネタバレは駄目だろ、と思いこちらに。
*414話でサンジがウソップに放った科白が大好きです。
*「逃げろ」と言った動けないサンジ君を見たナミさんの表情が堪んないよ。
*ベルメールさんが死んだのは、ナミを庇ってじゃないけど。彼女は母親の誇りに殉死したんだよね。でもまあナミにしたら「自分の所為で」です。死んじゃ駄目です。
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