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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*6月25日から8月2日まで連載していた現代パラレル『給湯室』の番外編 →1
 ゾロの過去話と、最終回より数ヶ月後の二人。

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 *****
      



「これ、落ちてた。キャッチの方は見つからなかったんだが、もうゴミになっちまってるかも。悪ィな」
 昨晩いきなり「泊めて」とやって来て、寝て、朝方「じゃあまた学校でね」と言って帰った女に、ピアスを渡した。花を象った小ぶりの物で、片方だけでキャッチも無いが、来た時つけていた筈だと思ったから持参したのだが、女は変な風に顔を顰めた。
「お前のじゃ、なかったか?」
 女は慌てて俺の掌の小さな装飾品に目を留めて「ううん、私の。ありがと、どこで失くしたのかなって思ってたの、助かった」と早口で言い、細い指でそれを摘んだ。
「じゃあな」
 用事はもう無い。踵を返した俺に、「うん、じゃあね」と、か細い声が聞こえた。

「可哀相に」
 隣でそれを見ていた剣道部の後輩が言う。
「何が可哀相だ」
「牽制のつもりっすよ、先輩、もてるから」
「何の話だ」
「他の女が泊まりに来て、女物のピアスが転がってんの見たら、牽制になるでしょ?『この人には女がいますよ、あんただけじゃないわよ』って」
 はぁ。知らず、溜息が出た。
「それで女が帰った後はピアスだの髪留めだのが落ちてんのか」
「そうっすよ、罪な男っすね」
「女ってのはだらしねぇモンだなって思ってた」
「先輩、掃除好きっすもんね。他の女に見つけられない様に、先手を打って掃除してんすか?」
「ンな訳あるか。…信用無ェ、って事だよな」
 全く頭が痛い。

 確かに、ひっきりなしではある。でも、同時に手を伸ばせる程器用でもないのに。

「ちゃんと言葉にしてんすか」
「何を」
「好きだとか、愛してるとか」
「んな事言えるか」
「先輩、硬派だからなー。男は黙って、って奴っすか?でもそれちょっと古くねぇっすか」
 取り立てて思っても無い事だから、なんだが、それを言うのは憚られる。非人道的だと罵られる気がする。そりゃ信用されなくても仕方ないか。

 好きだとか愛してるとか、良く分からない。
 ヤれば確かに気持ち良いが、それはちょっと違うだろう。
 隣で、媚びた高い声で何くれと喋られるなら、一人でいる方が良い。意に添わない言葉を強請られるのなら尚更だ。
 と言って、やって来る者を拒む程嫌悪している訳でもなく、やはり信用されないのも仕方ない。



「耳、開いてんだな」
 首筋に顔を埋めていたら、サンジが俺の左耳を辿った。
「みっつも」
 繊細だけれど、大きさも長さも充分な、節の目立つ男の指だ。
「若気の至りで」
「へえ」
「お前は、開いてないんだな。いかにも開けてそうなのに」
「これ以上チャラく見られたくねぇしな」
「お前、意外と真面目だもんな」
「意外とって何だよ」
 互いの耳に指を遣り、くすくすと笑う。

 初めて訪れたサンジの部屋は、俺の部屋より随分広い。セミダブルのベッドの上で、一枚の毛布の中、裸で、抱き合って。大分高くなった陽がカーテンを透かして部屋を白ませている。

「昔、おん…」
 つい、過去の女の話などしそうになる。
「何だよ」
「や、」
「昔、おん?な?が、どうしたって?」
 サンジはくすくす笑う。
「今更過去に嫉妬なんてしねぇよ、話せよ」
「…女が帰った後、よくピアスが落ちてて。女物のピアスってのは良く落ちるんだなって思ってて。俺のは落ちた事ねぇから」
「そりゃ、わざと落としてくんだろ」
「そうらしいな。当時はそんな事思いもしなくて、俺、掃除好きだからさ、すぐ見つけちまうんだよ。お前のだろって返すと、変な顔すんだよな、見つけてやったのに嬉しくねえのかなって不思議だった」
「朴念仁に恋すると、女の子も大変だね」
「今になって、悪い事したな、って、思ってよ」
「牽制なんてさせちまって?」
「ああ。それもあるけど」
「何?」
「俺も今、ピアスしてたら、落っことしてったかも知れねぇ」
 サンジの指が止まった。
「俺を、信用しねぇ?」
「そうじゃなくて。信用云々じゃねえな、って、あいつらの気持ちが分かった」
「何だよ」
「なんだろな。分かんねぇけど、そんな気分だ」

 好きだとか愛してるとか。そういうのが零れて、ちょっと醜い形に変質して。それが落とされたピアスなんだろうと、今になって思う。

 サンジの、穴の開いていない綺麗な耳朶を食む。ここに穴が開いていて、それを塞いでいたピアスが俺の部屋に落ちていたとしたら?
 きっと俺は突き返す様な真似はしまい。
 その意を汲んで、愛おしく思うだろう。

「ん…んっ…」
 擽ったげに身を捩る。その耳に。
「好きだ」
 湧き出る気持ちを声にして。ピアスの代わりに、落としていく。



20130909,0925,1016,1017

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