『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「なあ、サンジ」
「どうした、チョッパー?」
サンジは、灰汁を掬う手を止めて振り返ってくれた。
それが嬉しくて、チョッパーはくふくふと笑ってしまう。
「名前を呼ばれるって、嬉しいよな?」
「あー、まあ、そうだな」
サンジはコンロの火を止め、本格的にチョッパーに向き直った。
「おれの名前は、ドクターが付けてくれたんだ。呼ばれる度に、嬉しかったぞ」
「うん、確かに。俺も、ジジィにゃ『チビナス』って呼ばれてたけどよ、たまに『サンジ』って呼ばれたら、なんだか、誇らしい気になったもんだ」
普段は口汚く罵り合っていたが、畏まれば『オーナー・ゼフ』と呼んだし、『サンジ』と呼ばれた。ジジィ、元気にしてっかな。
サンジが暫し意識をバラティエへ飛ばしていると、チョッパーはとんでもない爆弾を飛ばして来た。
「ゾロに呼ばれるのも、嬉しいだろ?」
灰汁を掬ったお玉がサンジの手から滑り落ち、床で派手な音を立てて跳ねた。
サンジはお玉が床の上で落ち着くのを待ってから、ゆっくり拾い上げた。
「アイツが俺の名前を呼んだ事なんて、あったかなァ?」
お玉をシンクに置いて、サンジは煙草に火をつけた。
髪で隠れた、顔の左側をチョッパーに向けて、ゆっくりと煙を吐き出す。
サンジのそんな様子を、チョッパーは不思議に思った。
「なんだ、サンジは覚えてないのか?」
「うん?」
「ゾロは、呼んでる、って言ってたぞ?」
サンジは、指の股に挟んでいた煙草をぐしゃ、と握り潰した。
「サンジ! 火傷する!」
慌てたチョッパーが駆け寄って見上げると、サンジの顔は火がついた様な赤い色をしていた。歯をぐっと噛み締めて、眦を吊り上げ、眉間と鼻には皺を寄せ、鬼の様な形相だ。
サンジの手が無事なのを確認すると、チョッパーは一目散にキッチンを後にした。逃げるべきだ、と野生の勘が告げたのだ。鍋の具材にはなりたくない。
甲板で、チョッパーはこの話をした時のゾロを思い起こした。
確か、普段と殆ど変わらない、けれど、ほんの少し照れた様な、ふっと周りの空気が弛む様な感じだった。安心出来る様な、心が温かくなる様な。
サンジの反応は、一見正反対。けれど、イヤなニオイは感じなかった。
やっぱり、ゾロとサンジは『嫌いなニンゲン同士』じゃない。『むしろ好きな』。
チョッパーは、一見仲が悪そうな二人が好き合っていると確信出来て、嬉しくなった。
そして、自分の鼻の性能についてちょっと不安になったのは杞憂だったと知れて、やっぱり嬉しくなった。
20120830,0919
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