『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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「一本ずつ飲んだんだよな?ペース早いよな、つまみも無しで。結構な度数なのに」
ラウンジに入ると、コックが空瓶を一本ずつ手に持ち、信じられないと言った面持ちで眺めている。
「そんで、素面みてえな顔してんだもんな、ナミさんもお前も。凄えなあ、ナミさん。バケモンだな、お前」
「なんでナミは凄くて俺はバケモンなんだよ。何が違う」
「違うに決まってんだろ、ナミさんは素晴らしいレディで、まるでこの世に迷い込んだ天使の——」
「聞きたくねえ」
延々と続くだろうナミへの賛辞を聞いてやる余裕は無い。
遮ったまま、しかし何も言わず、その上ラウンジから出て行かない俺に、コックは夕食時からこっちの、面妖な顔を向けた。
「なあ、お前が、その、恋をしてるとかってナミさんがおっしゃったんだが、その、…本当か?」
きっと、努力をするのはこの場面なんだろう。
が、如何せん経験値が低過ぎた。
これが恋であろう事は、かろうじて分かっていたが、なにぶん初めての事で、言うなればこれは初恋だ。
この歳になるまで、まともに恋など知らずに来た。
大剣豪になる事しか頭に無かったから、寧ろ不要なものだと思っていた。
それはきっと、出会わなかったからだ。
気になる。気を引きたい。知りたい。認められたい。触れたい。
これまで洩れ聞こえてきた与太話を総合するに、俺のコックへの想いは紛う事無く、恋だ。
よりによって。こいつに。よりによって。恋。
しかし、そうだと名前をつけてしまえば、これ以上にしっくりくる言葉も無い。
望むものがあるのなら、手に入れる努力をするまで。
「本当だ」
「へえ、マリモだ寝太郎だと思ってたが、恋なんてするんだなあ。で?相手は、誰?」
口調は限りなく馬鹿にしたものに近かったが、空瓶を握る手が緊張を見せている。
「お前だ」
ごっ
空瓶が一本、床で鈍い音を立てた。丈夫な瓶だ。
コックは直ぐさま空瓶を拾うとそれをシンクにやり、朝食かなにかの下拵えに戻った。
まるで何も聞かなかったみたいに。
もう一度。
「お前だ」
聞こえない筈は無い。けれど俺の音声は、無いものにされた。
反応を待ったが、何も返っては来なかった。
『努力する価値はある』ってのは、見込みがあるって意味じゃねえのかよ。それとも努力が足りねえか。方向性が違うのか。
魔女への恨み言を呑み込んで、ラウンジを後にした。
20130125
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