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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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・現代パラレル
・新聞販売店勤務ゾロ、顧客サンジ

前回:11月23日付
初回:8月26日付

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19

 302号室のドアを開けて「お邪魔します」と声をかける。「おー、入れー」と家主の暢気な声が聞こえる。美味そうな匂いがする。喉が鳴った。

 テーブルの上にあったのは、完璧な朝食だった。
 ご飯。みそ汁。具はわかめと豆腐。焼鮭。だし巻き卵。ほうれん草のごま和え。白菜の漬物には鷹の爪の輪切りが乗っている。どれもこれも美味かった。更には食後に番茶。お茶にも美味い不味いがあるのだと知った。

 かなりの勢いで掻き込んだ気恥ずかしさをごまかしたくて、口を開いた。
「何となく、パン食だと思ってた」
「ああ、髪がこんなんだしな。外人さんだと思ったんだろ?」
 家主が金髪を一房掴んで言った。
「違うのか?」
「まあ、生まれは北欧だそうだけど、育ったのは日本だ」
「へぇ…」
 違和感を感じる言い回しだが、それについてよく考える前に家主が喋る。
「朝はしっかり食べたいからな。それに、職場が甘い匂いだろ? オーブンもフル稼働だから結構暑いし、汗もかく。だから朝は塩分多めだ」
 家主の声は、心地良い。つい聴いてしまう。

「他に、食べさせる奴が居たんじゃないか?」
 こないだの爺さんとか。そうじゃなくても、他に、誰か。
 おかしく聞こえない様に、細心の注意を払って発声した。
「居ねえよ? 何で?」
 家主の声は、何の含みもない様に感じられてほっとした。それでも。
「鮭。二枚焼いたんだろ?」
 そもそも自分一人で食べる食事をこんな立派に整える事さえ俺には考えられない。ましてやきっちり二人分の用意だ。
「ああ、一枚焼くのも二枚焼くのも手間は一緒だし。大体多めに作る。鮭はあれだな、余ったら解して鮭フレークにしとく。弁当にして持ってく事もあるし」
「やっぱりお前の分、俺が食っちまったんじゃねえか」
「良いんだよ。食わせたかったんだ」
 食わせたかった? 俺に? どうしてそんな事を言うんだ。そんな穏やかな顔で。

 時間にして三十分程。それでも、朝、出勤前の三十分は長居だろう。
「美味かった。ごちそうさま。長居して悪かったな」
「いや、ちっとも。もし、良かったら…」
 もし、良かったら?
「また、食いに来いよ」
 また。食いに。

 何て言えば良いんだ、こういう時は。
 とても有り難い申し出だから、「おう」と答えた。
 けれど…本当に食いに来ても良いのか?

 店に戻ると、所長の娘に詰め寄られた。
「こんな時間に何処で朝ごはん食べたのよ? ひょっとして、お客様に御馳走になったんじゃないでしょうね?」

 ——お客様の家に上がり込んではいけません。

「違う、お客様じゃねぇ。…トモダチ、だ」
 お客様ではあるけれど、ただの客ではない、筈だ。もう、友達と呼んでも良い筈だ。
 けれどどういう訳か、友達と言うのに躊躇した。友達、ではしっくりこない。でも、他に言い様が無いから、『トモダチ』と、カタカナで言った。
 こいつにそんな微妙なニュアンスが伝わるとも思わないけれど。伝える必要の無い事は、伝わらなくて構わない。



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