『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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眩しい程の陽光で目が覚めた。予定のない休日だ。寝覚めの一服を、とベランダに出ると、眼前の空は燦々と照る太陽に見合う青の代わりに、黄色くけぶっていた。手すりにはうっすらと黄色い砂が積もっている。指を一文字に滑らせてみれば、ざりざりと指の腹を汚す。
「黄砂…?」
それは大陸からやって来るのだという。
「遠いところから、ご苦労なこって」
あまり吸い込むのは体に良くなかろう、と喫煙者の身ながら思い、窓ガラスを閉めた。張り替えたばかりの畳は青々として、清々しい香りを発している。早々にヤニ塗れにしてしまうのも気が引けて、喫煙は一旦諦める。先に線香をあげちまうか、と慣れた手つきでライターに着火する。一本摘んだ線香の先に火を移す。ぱたぱたと風を送り、香炉の真ん中に突き立てる。流れるような動作で、最後に、手を合わせ頭を下げ瞑目。
毎朝の習慣だった。信心深い信徒などではないが、喫煙の習慣より早く身に付いていた。最早何に何を祈っているのか定かではないただの習慣だったが、その時々で、心に過る想いはその時一番の懸念だ。近頃は、答えを出す気にもならないような、くだらない想いが湧いていた。
あいつは、無事だろうか。あいつが無事に帰ってきたら、俺は、どう答えるつもりだろう。投げつけるように置いて行かれたあいつの想いに。
危険なのは織り込み済み。それでも、行かねばならないという。ガキの頃から胸に抱き続けた、大事な約束を果たす為に、必要なのだという。
それでも、帰ってくるつもりがある、と。ここに。俺の元に、と。
「ずっと、お前が欲しいと思ってた」
何の迷いもない顔で、言いやがった。
「無事帰れたら、返事が欲しい」
幾度となく回想したセリフを、今日も反芻する。せめてあいつが無事かどうか、知れたら幾らかは、答えに近付くだろうか。
いつ帰れるのか明らかにしないくせに、帰れるのかも分からないのに? 一生俺に、心配しながら待ってろと?
帰って来ないかも知れないのに?
その時、体に異変を感じた。黄砂を吸ってしまったのだろうか。それでこんなに息苦しくなるだろうか。指先から、体が硬質の物に変質していくような感じがする。
視線をやった指先は、硬く透明な石のようになっていた。水晶だろうか。占い師は水晶玉に知りたい事を映す。だったら、俺の知りたい事は、映るだろうか。
あいつは無事か? まだここに帰って来る気はあるか?
答えを求めて指先に目を凝らす。何も教えやしない水晶は、指先から徐々に腕に広がっている。このまま俺は、水晶になってしまうのだろうか。そんな奇病、聞いたことがない。俺が最初の患者かな、何の因果でこんな病気に。
自分の想いを誤魔化した罰だろうか。
この体が完全に水晶になってしまう前に無事帰ってこれたら、返事してやる。
返事など「俺もだバカ」以外、ありえない。
だから、どうか、無事で。
20160813,1223
utaeさんは黄砂が家のベランダの手すりに降り積もっていた日、青畳の部屋の仏壇の前で体が水晶になる奇病を得た話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943
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