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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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お題をお借りしました。チョッパーとサンジの少し不思議な話です。

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 雪のちらつく日だった。数日前には、気の早い桜が咲いたとニュースになっていた。異常気象、だ。「こうコロコロ気候が変わるんじゃ、体がついていかねえ」と、ジジィが珍しく弱音と取れる言葉を吐いていたから「年寄りにゃ厳しいなァ?」と悪態吐けば「煩ェクソガキ」と蹴り飛ばされた。直撃したケツっぺた(恐らく青痣になっている)を撫で擦りながら赤みを帯びた桜の古木を見上げれば、確かに五枚の花弁が寒さに震えている。
 ハァ——
 溜息も凍る気温に、かじかんだ指を擦り合わせてあてどなく歩く。肺腑に沁みる冷気が痛い。今帰っても気まずいだけだ。恩義を感じてないわけじゃないのに、それを素直に表せない。向こうだって俺を可愛く思ってないわけじゃない(と思う)が、ストレートな愛情表現なんて受けた試しがない。きっとお互い様なのだ。だいたい、そう育てたのはジジィじゃねえか。もやもやとするのにそう結論付けて出鱈目に歩いていると、突如眼前にぽっかりとした空き地が現れた。
 つい最近まで、こんな空き地はなかった、と思う。しかしそこに何が建っていたかは思い出せない。そして最近空き地になったにしては、草の覆い茂り方が盛大だ。まるでひと夏放置されたような。決して早春の、小雪舞う中で見る景色ではない。
 首をひねっていると、ごそごそ、と3メートル角程のその空き地の一番奥で、ぼうぼうと生えた草が揺れた。猫にしては大仰な揺れ方だ。よもや野良犬か、と。身構える。

 草の根元から覗いたのは、白いモコモコとした塊だった。それは丸い目をこちらに向けてフリーズしている。なんだあれ。知っているうちで一番近そうなのは、…羊?
 と思ったら、とっさに口をついたのは羊の鳴き真似だった。
「メー?」
 江戸家小猫もびっくりだ。あまりにも似てなくて。
「めえ?」
 それに返ってきたのもどっこいだったから、あの白い塊が羊でないのは明白だ。
「お前、何?」
 ヒトの言葉が通じるのか分からないが、取り敢えず、問う。
「おれは、チョッパーだ」
 ちょっぱー?
 思いの外しっかりとした返事で驚いたが、どう見ても微塵切り器ではないので、名前なのだろう。
「羊、ではねえのか」
「トナカイだ」
 トナカイ、というのはクリスマスにサンタのソリを引く獣ではなかったか。鼻の赤いのを気にしているのがルドルフとか。チョッパーとやらの鼻先は、青い。そしてトナカイというより、羊の着ぐるみを着た小動物、例えば狸、とか、のぬいぐるみ、みてえな。
「俺の知ってるトナカイとは、ずいぶん違うみてぇだけど?」
「おれは悪魔の実を食ったから……」
 チョッパーとやらは、目に涙を浮かべ、洟をずずっと啜った。謎の罪悪感に、悪ィ、と声をかけようとした瞬間、ばふっと音がした。
「これなら知ってるトナカイか?」
 先程のぬいぐるみもどきが、立派な四つ足の獣に化けた。声は同じだから、おそらく同じ個体だ。先端の分岐した立派な角。確かに思い描くトナカイはこんな感じだ。実物は見たことねえけど。
「なあ、トナカイ……」
 面食らっていると不安げな声がする。
「ああ、トナカイ。トナカイだな!」
 言ってやると、再びばふっと音がして、元のぬいぐるみもどきに戻った。
「だろ! おれはトナカイだ!」
 至極嬉しそうだ。
「そうだな、お前はトナカイだ」
「うん!」

 自称トナカイのチョッパーは、トコトコと俺の足元までやって来て俺を見上げた。
「桜を見に行きたいって言ったら、寒いからこれ着て行けって、えーっと、あー、誰だっけ…?」
 白いモコモコはどうやら防寒着なのらしい。名前を思い出せない誰かが、着せてくれたのだ、と。それを誰かと俺に訊かれても、知る由もないから質問を返す。
「お前、どっから来たんだ」
「海だよ」
 家の裏手は確かに海だが、トナカイは海の生き物じゃねえなあ。ましてや喋るぬいぐるみもどき(しかも変身機能付き)など、目撃情報すら耳にしたことがない。どこか他の、遠い海なのだろうか。
「どうやって来たんだ」
「んー……、なんか、ごそごそしてたら、ここにいた……」
 急に不安になったのか、自分が迷子になったと気付いた子供みたいに頰が強張っている。しゃがんで目線を合わせ、一緒に桜の木を見上げる。
「見えるか? 桜」
「うん」
 チョッパーは桜の花を目に焼き付けるようにじっと見て、それから目を閉じて俺の首元のあたりで鼻をすんすんと蠢かせた。
「同じ匂いがする」
 誰と、と訊くのはやめておいた。また不安な顔をさせてしまう。多分、名前の思い出せない、モコモコを着せてくれた、誰か。多分、チョッパーを温めてくれる、誰か。
 俺もチョッパーに倣って、寒さに耐えて咲いた桜の花を目に焼き付ける。チョッパーは俺にもたれかかり、すうすうと寝息をたてはじめた。程良い重さの程良い温もり。俺の瞼も自然と落ちる。

 気がつけば、チョッパーは居なくなっていた。草の根元をごそごそして、無事海に戻れただろうか。無事に誰だか思い出せたろうか。
 雪は止んでいた。桜は咲いている。俺も家に帰ろう。
 以来、あの空き地は見ていない。トナカイと聞くと思い出す、少し不思議な記憶の欠片だ。


20160810,0811,1222,1223

utaeさんは今年初めて桜を見た日、草がぼうぼう生えた3メートル角の空き地で一匹の羊に出会った話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943


 夏に半分くらい書いて、チョパ誕だしチョッパーの出てくる話……と思って仕上げました。お題に添えていない自覚はあります…
 チョッパーお誕生日おめでとう!
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