バレンタイン・キッス 2015/02/15__00:00

＊現代パラレル
　高校二年生のバレンタインデー

---

　＊＊＊昼休み＊＊＊

「ロロノア君ってチョコ嫌いらしいよ」
「だからバレンタイン受け取ってくれないんだー」
「チョコじゃなきゃ受け取るかな」
「えー、何あげんの」
「うーん、チョコクッキーとか？」
「チョコ嫌いなんでしょ？」
「でもバレンタインだし、チョコ入れたいじゃん」
「無理じゃない？手紙だって突っ返されるって言うし」
「何それ硬派？硬派気取ってんの？」
　けらけらと笑う女の子達は、可愛い。
　そうそう、あいつ『硬派気取って拒否』するから、何もやらなくていいよ。無駄に出費して無駄に傷心するなんて馬鹿みたいでしょ？
　あいつ、人から貰う物に、興味無いんだ。
　自分が欲しい物を、自分で手に入れる。そういう奴だよ。『あげたい』って気持ちなんて、理解しねえの。
「あ、サンジ君！　チョコあげる！」
「ありがとお〜」
　俺？　有り難くいただくよ？　当たり前じゃん。
　あげたい、って思って貰えるって、嬉しいだろ。


　＊＊＊放課後＊＊＊

「何だよその荷物」
　いつもの鞄の他に、大きめの紙袋が一つ。気の利く女の子が、チョコと一緒にくれたのに本日の戦果がどっさり。
「お前は誰からも貰えなかったの？　可哀相に」
「俺は断ってんだよ。大体お前のそれは、ホワイトデー目当てだろ」
　知ってるよ。俺の美味しい手作りクッキーをひと月後に手に入れる為の代価、先払い。すっげー利子がつくからな。（美味しいの作るから楽しみにしててね女の子達。）でも。
「本命だって、あるかもよ？」
「…そうかよ」
　一言だけの返事の前の、ほんの少しの間に、ちょっとした優越感を持つ。
　こいつね、俺に本命チョコ渡す女の子が居たら、不愉快なんだぜ？
　だからね、君達がこいつに何か渡そうとしても、それは無駄でしかないの。


　＊＊＊別れ際＊＊＊

「チョコ、無ェのかよ」
　何度か言い出しかけて、言葉をのんでいたのは分かってた。最後の最後まで言えなかったのに、言わないでいる事も出来なかったんだ、と思うと笑いそうになる。でもここはポーカーフェイス。
「お前チョコ嫌いだろ」
　素気無く言ってやる。
「だから、女の子がくれるっての、断ってたんだろ？」
　少し困った顔をするのを見るのは、悪くない。更に追い打ち。
「お前はチョコ、くれねェの？　俺はチョコ、嫌いじゃねェよ？」
　ゾロは少し考えて、言った。
「チョコより好きなモン、くれてやるよ」
「へえ、なにを」
「だからお前も、寄越せ」
　腕を引かれたと思ったら、人目につかない路地裏に引っ張り込まれる。
　どっちも女の子じゃないんだから、この日に贈るのはチョコじゃなくていい。
　甘いのだけは、間違いないから。

---

20150214

＊『人の気も知らないで』の二人がうまいことくっついたらこうなる（予定）