『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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その晩の月は、やけに青白かった。ほんの少し歪な円が、ぺかぺかと作り物めいた光で甲板を照らす。
コックの髪がそれを柔く弾くのを、俺は見ていた。気紛れな潮風に嬲られて、乱されて、元あるべき様に戻る。純粋に、触ってみたいと思った。どういう仕組みになっているのか。どんな感触がするのだろう。純粋な、興味。
こんな夜ならば、許される気がした。
目を眇めなくとも、眩しいという程ではない。陽光の元では、金の髪も白い肌も、眩し過ぎるのだ。自分にはついぞ向けられた事の無い、笑顔も。
それにそっと手を伸ばしても?
つと手を伸ばすと、コックは俺の指先を見た。常に微量の涙で覆われている眼球は月明かりに、常より潤んでいる様に思われた。その眼球が、月光を弾いて、作り物めいた光を、放つ。刹那、眼球を覆う涙が溢れ、コックの頬を伝った。
「あ」
伸びた手をそのままにうっかりと出た俺の声は、コックに届いた。
「え?」
作り物ではない光が、コックの眼球に戻る。
「あ…」
コックも自身の頬を伝う涙に気付いたか、手の甲でそこを拭った。
ゆっくりと、手を下ろして問う。
「どうしたんだよ」
「や…分かんね…」
コックはごしごしと両目を擦る。長い前髪に隠れた方の頬も濡れているから、そちらにも涙を流す機能はあるらしい。
そういえば、そちらの目を見た事は無かった。どうしていつも隠しているのか、どんな色をしているのか、どんな風に俺を映すのか。見たい。コックの瞳に映る俺は、どんなだ。
一旦は下げた手を、再び伸ばす。コックは不思議なものを見る目で俺の指を辿る。
遂に触れた前髪をくしゃりと握った。
そんなに強くしたつもりは無いのに、コックはぎゅと目を閉じた。
「目ェ開けろ」
俺の言葉にゆっくりと瞳の青を覗かせたコックは、常なら考えられない弱い声で言った。
「…なにすんだよ」
なにって。ただ触りたかっただけだ。見たかっただけ。
指を髪の中に差し入れ、ゆっくりと滑らせていく。ひんやりとしたそこは、滑らかだった。
頬に親指の腹を当て、既に乾いてしまった涙の後を擦ると、コックは擽ったそうに頬を弛ませ俺をじっと見た。
そこに映った俺は、とても見ていられない顔をしていた。まるで魂を抜かれた様な。
実際抜かれたのは、骨の方だった。
見ていられないから、目を閉じ指先に意識を集中させた。熱を放ち始めたのか、俺の熱が移ったのか、そこがしっとりと熱を感じさせる様になるまで、飽く事なく触れた。コックは大人しくされるがままだった。
おそらく俺も、コックの骨を抜いたのだ。
骨の抜かれたもの同士、抱き合う様になるのは自然の成り行きだった。
やけに青白い月だけが、それを見ていた。
20140603,0610,0616
*19歳。コックさんの左目は、大いに謎でした。
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