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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*夜間、二人、背中合わせで

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 不安が無い、と言えば嘘になる。
 切った張ったの世界に生きる男だ。——お互い。
 真っ当にささやかな暮らしを送っていても、死は避け得ない人生の最後だ。誰にも必ず訪れる。ましてや俺達は。それが予定より早くしかも突然、更には惨たらしい状況で訪れる可能性の高い生き方を、選択している。

「お前の最期は、どんなんだろうな」
 何気なく漏れた疑問に、紫煙がひとかたまり闇にとけるだけの間を置いて、ゾロは何気なく答えた。
「野垂れ死にだろ」
 紫煙をもうひとかたまり吐き出す。
「だろうなあ」
 俺は船尾に広がる黒い海を見ていて、ゾロは多分前方の海を。今はちょっと、顔を見たくない。し、見せたくない。

 不安が無い、わけじゃないのだ。
 今背中で感じる体温が、突如奪われる事。ゾロが俺の体温を突如感知出来なくなる事。
 有り得ない話じゃないのだから。

「怖ェのか」
 ぼそりと吐かれた質問に、即座に答える。
「んな訳あるかボケ」
 怖ェに決まってんだろ。
 そんな弱音など、決して気取られたくないから。

 背中で感じる熱に、重みが加わった。
「強ェんだな。俺は…」
 背中が戦慄いている気がして、息を詰めた。

「怖くて、堪んなく、なった」
 ゾロの弱音。そんなものが聞けるとは思わなかった。存在するとも、思ってもみなかった。

「…なった? 昔は、怖いもの知らずだったか?」
 茶化すのも躊躇われて、中途半端な発声になった。しかし何時、何故変化したのかは聞いておかなければいけない気がした。
「そりゃ…」
 ゾロは言い淀んだ。自分の弱い所を、よりによって俺に曝け出すのは、躊躇うだろう。
「何も、知らなかったからな」
「何も?」
「怖いもんも、…大事なもんも」
 背中の重量が増し、不意に消えた。同時に熱も離れ、一気に心細くなった所で背中から熱が、覆い被さった。
「置いてくのも、置いてかれるのも、こんなに怖い、もんなんて」
 すっぽり包まれて、近い所で鼓膜を震わすゾロの声が、まるで現実感無く感じられる。けれど伝わる熱も匂いも確かにゾロのもので、確かに現実だ。こんなに、怖いのも。

 それでも。
「進むんだろ?」
 問えば、力強く返される。
「当たり前だ」

 だったら。
 この怖さも不安も、大事なもんの一部だ、それと共に。
 共になら。
 強さに出来る。
 背中に熱を感じられる間は、強く在れる。

 回されたゾロの腕が、一瞬躊躇いを見せてから、一際力強くなった。
「お前も、行くだろ?」
「当たり前だ」

 当然の様に返せば、ゾロの詰めていた息が解かれる。馬鹿だな、そんなに怖いかよ。
 俺は体を返してゾロに向き合い、腕を回した。
 熱も鼓動も、ちゃんと、ある。この腕の中に。

 どんなに不安でも、ちゃんと、行くから。お前が背中を預けられる俺でいるから。
 だからたまにはこうして抱き合って。不安ごと、全部。


20140606,0609,0612
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