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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*ワンピースや大剣豪やオールブルーは、手に入れる、から。言うまでもないものとして。

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「欲しいもの?」
 話のついでに、欲しい物の話になった。
「肉!」「金銀財宝」
 間髪入れる事無く返った答えに苦笑しながら、サンジは「んー、いっこだけ…あるけどな…」と、柔らかく口を濁した。
 常ならぬ雰囲気に、ゾロの眉がぴくんと上がる。それにちらりと目を遣ったサンジは、その空気を破壊して言った。
「欲しいっつーか可及的速やかに導入すべきは鍵付き冷蔵庫だと思うよナミさん!」
「それはサンジ君がちゃんと見張ってれば済む話でしょ?」
「イヤ、ナミ…先ずは船長につまみ食いを止める様厳命してやれよ、そこは」
 肩を落として正当なツッコミを行ったウソップに、ルフィは口を尖らせる。
「だって腹減るんだもんよ。ウソップだって…」
「わーわーわー」
 じろりとサンジに睨め付けられたウソップが、大声でごまかす作戦を早々に諦め、ラウンジを飛び出して行く。それを嬉々として追いかけるルフィ。「ガキ…」と呆れた様に、しかしどことなく嬉しそうに呟くナミもラウンジを出る。
 残ったゾロは、先程サンジに感じた違和感を検分しようと彼を見る。それを快く思わない、とはっきり分かる態度で、サンジはゾロを無視した。
 しかしゾロはそんな仕打ちなど屁とも思わず、不躾な視線を遠慮無くぶつける。サンジはその圧に耐えられなかった。
「何だよ」
「何が、欲しいって?」
「…鍵付き冷蔵庫」
 サンジが渋々答えたそれは、真実ではないと、ゾロは一刀両断する。
「違ェだろ」
「イヤ、大事だぜ? 大きなネズミが頻繁に出るこの船には、特に必要だ」
 なんとか混ぜっ返そうとするサンジを、ゾロは許さなかった。
「この船に必要な物、じゃねェ。お前が、欲しいもの、だ」
 サンジは溜息を吐いた。
「そんなもん…。世の中にはな、ゾロ。知らねェ方が良いって事も、あるんだぜ?」
 ゾロの追及に諦めた振りをして、サンジが本当に諦めているのは、欲しいもの、の追求だ。それをすんなり理解したゾロはしかし、サンジの言う「知らねェ方が良いって事もある」を理解する事は出来なかった。

 諦めて欲しくない。
 サンジは何かを、例えば煙草を吸う度に、何かを諦めている様な気が、ゾロにはしていた。
 何かを諦める代わりに、毒でしかない煙を肺に入れている、様な。
 貪欲に何もかもに手を伸ばす方が、似合うと思うのに。
 全部を柔らかく掴む、それが似合う手だと、それが許される手だと、思うのに。

「口に出してみりゃ、案外簡単に手に入るかも知れねェぜ?」
 意図したよりも、絞り出す様な声になってしまった。ゾロはそれに舌打ちしたい気分をごまかす為に、続ける。
「少なくとも、そうやって最初から諦めちまうよりは、可能性があるだろ」
 サンジは、笑った。また何か一つ、諦めた様な顔で。
 ゾロは、サンジにそんな顔をさせてはいけない、と思う。
「俺にやれるもんなら、なんとか」
 ゾロはそこまで口にして、驚いた様に自分を見詰めるサンジに、自分が何を言ったかを知る。
 驚いた。なんとかして、俺が、与えてやりたいと、思っている、とは。諦めた顔をさせたくないのも、それは全部、ある感情に起因するのではないか?
 ゾロは、それが何か、に思い至って、頭を抱えて踞りたい様な、腹を抱えて笑いたい様な、今まで経験した事の無い衝動に突き動かされた。
 結果、目の前の男を、抱き締める、という、行為に、でた。
「な、」
 突然思いも寄らない行為に襲われたサンジは、短く驚きの声を上げた。
「何が欲しいのか、言え。俺がなんとかしてやる」
 サンジが何を欲しいのか、知りもしないでゾロは、大口を叩いた。そうしたいと、思ったから。


 心は、仮令言葉に乗せなくても、触れる体から流れ込む事も、ある。
 サンジは、ふ、と息を吐いた。それは、安堵だ。それをゾロに知らせてやらねばなるまい。
「もう、手に入った」
 何を言うんだ、と怪訝に思ったゾロはサンジの真意を確かめる為に表情を読むべく、体を離そうとした。
 サンジはゾロの背中に腕を回す事で、それをやんわりと制する。
「もうしばらく、こうしてろよ」
 サンジの声は、柔らかかった。
「な、」
 驚きの声を上げたのは、今度はゾロだった。
 仮令言葉に乗せなくても、心が触れる体から流れ込むとしても、サンジははっきりと、言葉にして伝えたい、と思った。
 それが、この不器用な男に対する誠実だろうと、思った。
「俺はお前が欲しいから」
 簡素な言葉で告げられたサンジの誠実は、確かにゾロに、流れ込んだ。


 腕の力を強めたゾロに、サンジは言った。
「お前さ、俺が何を欲しいか知っちまったからには、覚悟出来てんだろうな?」
 ああ、「知らねェ方が良い」ってのは、そういう事か。
「お前がなんとかしてくれんだって?」
 この期に及んで何言ってやがる、とゾロは思ったが、サンジの様子が然も楽しげだったから、言った。
「俺にしか、やれねェだろ」
 サンジはゾロの首元で、満足そうに、笑った。


「ところでお前、俺の欲しいものが何か、訊かねェのか」
 ふと思い付いて言ったゾロに、サンジは言った。
「知らねェ方が良い事も、あるからなァ?」
 への字に曲がったゾロの口元を見て、サンジは人の悪い顔で笑う。
「もう手に入ったろ?」
 その言葉が事実だと、確かめる様にゾロは、更に腕の力を強めた。


20140501,0502,0507
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