『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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ゾロは夜な夜なラウンジを訪れ、昔話をする。それがここの所の習慣だ。
何とはない話を、訥々と。
秋の彼岸に出されるおはぎの話。
それが春の彼岸ではぼたもちと呼ばれる話。
野山を駆けて得た知見、主に食べられる草と食べちゃならない草の違いについて。
食べ物の話が多いのは、コックである聞き手の気を少しでも引く為だ。
ゾロの口を滑らせるのは酒と、それに合わせて供される肴。イメージより低い声で穏やかに返される相槌。
道場では剣術の他にも読み書きそろばんを習い、自分も多少はそろばんを弾ける事。
しかし剣を振るう以外は大抵居眠りしていた事。
先生は優しかったが時に雷を落とし、その後激昂せずに伝えられる怒意の恐ろしかった事。
女が男より弱いと言うのは本当か。
「馬鹿言え、男如きがレディに勝てる訳ねぇだろ」
サンジは言下に否定した。
「だよな。俺の生涯で一度も勝てないのはくいなだけと決めている」
「…くいなって?」
話した事なかったか。
これだけ昔話を重ねているのに、そのどれもに居た筈のくいなについて、俺は一度も話していなかったか。
きっと無意識下で避けていた。その理由に、ゾロはすぐに気付いた。この男に出会う前なら、きっと気付けなかっただろう。
「初恋のレディか?」
「…そうかも知れねぇ」
自分でも分かっていなかった想いを簡単に言い当てたこの男を、ゾロはほんの少し、疎ましく思った。
「へぇ、どんな子だよ」
「先生の娘で、少し年上で、強かった」
「想いは遂げたか?お前はその子置いて、故郷を出たのか」
「それより前に、死んじまった。勝ち逃げだ」
にやにやとしていたサンジの顔が凍り付く。違う、そんな顔をさせたいんじゃない。
「悪ィ…」
恐る恐る出されたサンジの声が、更にゾロを苛つかせた。
「ただの事実だ、何も悪くねェよ」
全くの本心を、ゾロは告げる。
間に合わなかった初恋になど、興味はない。今はただ、突如現れたこの想いをどうするかで手一杯だ。
まだ告げていない恋心を。
自分の事を知らしめたいという欲を満たそうと、過去を話す事にした。
サンジは疎ましがらず耳を傾けてくれる。それはゾロを満足させた。
知りたいという欲は、後回しだ。身体の欲は、もっと後。物事には須く順番がある。
それは分かっていても、恋心を告げる手段すら、ゾロは知らない。
20140111,0112,0114,0116
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