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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*「編み物剣豪(腹巻きは常に自作w)に手取り腰取り編み物を教わるも、何故かうまく編めなくてキーってなってるサンジくん」ってツイートに触発されて

*デキてない二人 in サニー号

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 *****
      



「お前何やってんの」
 展望室に夜食を差し入れてやったら、ゾロが普段握っている刀より遥かに小さく細い棒を両手に持ってしきりと動かしていた。口には咥えていない。棒の片方には見覚えのある緑色がぶら下がっている。あ、こっちにも棒が刺さってる。二本?四刀流?
「あ?これか。腹巻」
 ゾロは面倒くさそうに言った。
「俺は何をやってるのか訊いたんであってそれが何かを訊いたのではない」
「あーハイハイ。腹巻編んでる」
「腹巻って、お前の腹に常時張り付いてる、それ?」
「他にあんのかよ」
「てめえ自分で編んでんの?」
「そうだよ」
「へええええ。故郷の彼女が編んでくれたのかと思ってた!」
「なんだそりゃ」
 ゾロはそれだけ言うと、視線を棒の先に戻してまた手元を動かし出した。
 一本の糸が、ゾロが手を動かす度にどんどんと布の一部になっていく。不思議だ。俺は飽く事なくその様子を見ていた。
 子猫が遊ぶみたいに毛糸玉がくるくる転がる。緑色したそれは、まるでマリモだ。マリモは転がってどんどん大きくなっていくらしいが、これはどんどん小さくなる。遂には玉ですらなくなって、転がる事も出来なくなって、糸端が宙に浮かぶと、まるで啜った麺の最後みたいにちゅるんと布に吸収されてしまった。
 毛糸玉が消滅して、腹巻が出現。
「魔法みてえ」
 うっかり漏らすと、ゾロは出来立てほやほやの腹巻からいつの間にか抜けていた棒を俺に差し出した。
「お前もやってみるか?」
 え、俺にも出来るの?

「まず目を作る」
「め?」
「こう、編み棒を二本使ってな、……」
 編み棒って言うんだ、これ。編む棒だから?まんまだな。
 俺の左手になにやら複雑なハンドサインを強制的にさせてこれまた複雑な順番で毛糸を張り巡らせたゾロが、俺の右手に編み棒二本をまとめて握らせ、それをまたまた複雑に毛糸にくぐらせていく。俺の背後から二人羽織でもしてるみたいにして、顔は俺の肩に乗せる様にして俺の手元を覗き込んでいる。
 右手の編み棒にどんどん毛糸が巻き付いていく。すげぇ不思議。だけどそんな事より。
 俺なんでゾロに抱き抱えられるみたいになってんの。顔が、近ぇ。
「こんだけありゃいいか」
 不意にゾロの声が間近で聞こえて、俺は我に返った。ゾロは俺の右手に握らせた、丁度マフラーぐらいの幅に毛糸が巻き付いた物から一本編み棒を抜いて、毛糸のついた方を左手に持ち替えさせ、右手に抜いた一本を握らせた。
「初めっから輪編みはハードル高ぇから、ガーター編みのマフラーでも編め。表編みだけだから、簡単だ」
「ガーター編みか表編みかはっきりしろ」
 そんなの、多分どうでも良い事だ。でも、何か言わなきゃならないと思った。
「編み方は基本的に表編みと裏編みの二種類しか無ぇ。で、こっちから表編みしていって、端まで行ったらひっくり返す。ここで裏編みに変えて、また引っ繰り返ったら表編みにすればそれはメリヤス編みだ。ずーっと表編みだけなら、表面から見たら表編みと裏編みを交互に繰り返してる事になる。それがガーター編み」

「何言ってるかちっとも分かんねぇ…」
 なんかゾロがとてつもなく賢く見える。何このマジック。
 ゾロが苦笑した。あ、馬鹿にしたな?
「まあ理屈はどうでも良い。ほれ、編むぞ?」
 ゾロは俺を後ろから抱き抱えたまま、俺の左手人差し指をピンと伸ばさせ、毛糸を掛けると、俺の手を上から包み、きゅ、と握った。両手を。
 右手の何も掛かっていない編み棒を左手の編み棒に引っ掛かっている毛糸の輪に通して、人差し指に掛かっている毛糸に引っ掛けてそれを引っ張り出す。すると右の編み棒に毛糸が引っ付いた。
 同じ事をひたすら繰り返す。すると、左の編み棒に巻き付いていた毛糸がすっかり消え、右の編み棒に移った。
「これのくり返しだ」
「すげぇ。毛糸の消失と出現マジックだ…」
 またゾロが苦笑した。
「ほれ、やってみろ。まずは右と左を持ち替える」
 言われた通りにする。
「左手人差し指に毛糸を掛ける。右手の編み棒は手前から入れる。毛糸を手前に引っ掛けて引き抜いたら、左の輪を編み棒から外す」
 言われた通りにやると、また左から右に毛糸が移った。
「そのくり返しだ」
 ゾロはもう俺の手を握ってないし、俺の肩に顔を乗せてもないし、俺を抱き抱えてもない。背中から声が聞こえるだけ。
「手前から、引っ掛けて、引き抜く。手前から、引っ掛けて、引き抜く」
 俺はぶつぶつ言いながら表編みに集中した。後ろからの視線に、意識が持っていかれない様に。

「手前から、引っ掛けて、引き抜く。手前から、引っ掛けて、引き抜く」
 集中している筈なのに、後ろからの視線が気になって仕方ない。ああほらまた引っ掛け損ねた。
「くそっ」
 少し離れていたゾロが、また俺の背中に体を密着させて俺の手元を覗き込む。
「手前から、引っ掛けて、引き抜く。手前から、引っ掛けて、引き抜く」
 集中なんぞ出来やしねぇ。ぷつ、と左の編み棒から抜けた毛糸の輪が、右の編み棒に移動する前に消えた。
「ああ〜っ?」
 どうすりゃいいんだ、これ。と思わずゾロを振り返ると、顔は思ったより近かった。
「大丈夫だ、焦んな」
 ゾロは再び俺を抱き抱える様に二人羽織で俺の手を握り、編み棒を動かして消えた筈の輪を再び出現させた。魔法みたいに。

「手前から、引っ掛けて、引き抜く。手前から、引っ掛けて、引き抜く」
 危機は脱したというのに、ゾロは俺の背中に張り付いたままだ。つまり俺は依然ゾロに抱き抱えられており、ちっとも集中出来ない。
 なんか毛糸こんがらがったし。
「くっそ」
「あーあー、お前、意外と不器用だな」
 ゾロが小憎らしい事を言って絡まった毛糸に指を伸ばす、俺の体の脇から。腕を若干伸ばす事になりその分腕の拘束は強くなり俺は完全に閉じ込められている。誰の所為だと思ってるんだ、お前がそんな体勢するから俺が集中出来ねぇんだよ馬鹿。
 ゾロは絡まった毛糸を意外にも器用に解すと、俺の手から編み棒を奪った。そして俺の三倍ぐらいの速さで編み進めていく、俺の背後から。本当は十倍ぐらいだったかも知れない。俺はただ黙って、ゾロの手が一本の糸を布にしていく様を見ていた。それ以外にする事がなかった。何も出来なかった。
 魔法みたいだ。悪態吐くんでも腕を振りほどくんでも、やろうと思えば出来た筈なのに。

 マリモみたいだった毛糸玉がすっかりマフラーに仕上がった。ゾロはその出来に満足そうに頷くと、ぐるっとそれを俺の首に巻いた。
「冷える時は巻いとけ。首元あっためると良いって言うからな」
「お、お、お前の腹巻と、お、お揃い、かよ!」
 首元はマフラーを巻かれるより先に、もっとずっと熱い。
 その熱源の離れた首元を、マリモ色のマフラーが温めた。
 魔法みたいに。


20131219

* special thanks みなきち様
(サンジ君が「キー」っていうより「ポー」っとなちゃった。ごめん!)

*デキてはないが、ゾロは分かってやってるし、サンジはチョロい。時間の問題だな。

*文中『マリモは転がってどんどん大きくなっていくらしい』と書きましたが、実際どうかは知りません。ごめんなさい。サンジ君はそう思ってるって事で。
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